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「ユキお帰り!ご飯食べる?」
俺が階段から降りてきた音を聞きつけ、廊下の奥のキッチンからぴょこんと光が顔を出した。
「今日はなに?」
「ビーフシチューだよ。島木さんがめずらしくしっかり買い物してきてくれたからね」
「ほら」と光が鍋の蓋を開けるといい匂いが立ち込めた。美味しそう。ふわんと立ち込めたいい匂いの湯気を吸い込むとお腹がきゅうと小さく鳴ってしまった。
「ふふ、今ユキの分も出すね」
この地下で俺たちは寮生活のような生活を送っている。料理の得意な光が食事当番。俺ともうひとりはもっぱら掃除に洗濯係。彼らは、異様な空間の中で暮らす俺の今の“家族”だ。
「晃は?」
「あっきーはまだオシゴト。長引いてるのかな?」
「そっか」
ふと、数時間前に一緒にここを出た晃の顔を思い出す。オシゴトが嫌いな晃はものすごく浮かない顔をしていた。嫌なお客さまに当たっていないといいんだけど。
「光は食べたの?」
「うん。僕はさっき食べちゃった」
光に渡された皿を受け取って小さな食卓に腰を降ろす。反対側にはにこにこと笑顔の光が座った。そして、俺の隣の空いている席が晃の席だ。
「…美味しい」
「でしょ?久しぶりに食べると美味しいよね」
光が作ってくれる料理を食べるとこれまでの生活を思い出す。毎日家族三人で食卓を囲んでいた。たまに父親の帰りが遅くなる日があって、そんな日はこっそり外食に出たりしていた。
こうして誰かと食事をするたびに必ずそのことを思い出す。両親は今どこにいて、何をしているんだろうか。元気に暮らしているのだろうか。
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