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「…これ、椎葉さんの車なんですか?」
「そうだよ。なかなか乗り心地がいいだろう?」
乗り心地とか、それ以前の問題だと思う。うちの両親が乗っていた普通の乗用車とは比べものにならないくらい高そうな革張りのシートも、搭載されている機器のレベルも全部おかしい。
「…ありえない」
「ん?」
「なんでもないです」
椎葉さんのベントレーは確かに快適だった。だるい体に響く振動も少ないし、静かな車内に小さく流れるクラシックが心地よかった。
「ユキくん次の後もあるの?」
「…次で終わりです」
「そっか。頑張ってね」
なにが頑張ってねだよ。あんただって散々俺のこと好きにするくせに。
「着いたよ。それじゃあいってらっしゃい」
「…ありがとうございました」
「次のお客さんは通常コース?」
「そうですけど」
「わかった。終わった頃に迎えに来るよ」
「は?」
「じゃあ」と言って俺に有無を言わせる前に椎葉さんは走り去って行った。
中途半端に栄えたこの街とあの車があまりにも不釣合いすぎて面白い。道ゆく人たちも物珍しそうに走り去るベントレーを眺めていた。
いやいや、それどころじゃなくて。あの人ほんとわけがわからない。
迎えに来るってどういうこと?この後椎葉さんの相手しろってこと?
「三人目で椎葉さんは無理だって…俺死んじゃう…」
そうホテルの前でひとりごちてから、俺はエントランスに向かって歩き始めた。
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