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なんだか、綺麗なものを見るのが物凄く久しぶりだった。
この二年間オシゴト以外はあの地下で生活して、外に出されればいつものホテルで体を売らされるだけの日々だったから。
「…きれい」
改めて見た世界は綺麗だった。俺が生活している薄暗い地下とは比べものにならないくらいキラキラと輝いている。俺もあの日がなければ今もこの世界を生きていたはずなのに。そう考えたら鼻の奥がツンと痛くなった。
「夜の外出は久しぶり?」
「はい…二年ぶりです」
二年前は、高校の帰りに友達と寄り道したりしてこのキラキラの中を歩いていた。二年前は、あの何気ない毎日が、たしかに幸せだった。
「島木くんは君たちを閉じ込めているんだねぇ」
「仕方ないんです」
仕方ないって、なにが仕方ないんだろう。
体を売って返してるこの借金だって、俺が作ったわけじゃない。俺が返さなきゃいけない理由もわからない。
俺の世界は、二年前のあの日からずっとつらいことばっかりだ。
「ユキくん」
涙で夜景が滲む。涙越しに見える外の世界はぼんやりしているのに綺麗なままだ。そんなことを思っている最中に椎葉さんが不意に俺を抱きしめるもんだから、溜まっていた涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
「…どうした?」
「…うっ…おれっ…」
ほんとは、こんな世界を生きたくない。
鼻声で、それでもしっかりと言葉にしたこの思いは、きつく抱きしめられたせいで椎葉さんの胸の中だけで消えた。
椎葉さんに聞こえたのかはわからない。どういうつもりなのかわからないけれど、きつく抱きしめ続けてくれる椎葉さんの胸に顔を押し付けてまた泣いた。
泣きすぎて頭痛がする頭の中にふと晃の言葉が浮かんでくる。
晃、俺はやっぱりこの世から自分だけ消えちゃえばいいって思うよ。
だって、外の世界はこんなにも輝いている。
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