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人は皆、自分とは違うものに恐怖を感じ、そして惹かれる。
「…俺のこと」
「ん?」
「俺のこと、助けてくれるんですか?」
そして、不思議な魅力に惹きつけられた人は皆盲目になってしまう。
「…私ならユキくんの生活を変えることが出来るかもしれないね」
この笑顔の裏に隠れているものが何かはわからないけれど、こんな自分を救い出してくれるのならそんな事はどうでもいいと思った。彼が善人だろうと悪人だろうと関係ない。とにかく俺は、この世界から逃げ出したかったんだ。
「全ては君次第だよ」
優しく俺の髪に触れながら、そう囁く椎葉さんにこくりと頷いて見せる。
「でも、光も一緒じゃないと意味が無いんです。また光をひとり残すなんて駄目なんです」
「光って?」
「…俺と、同じ」
「ああ、なるほど」
髪を梳いていた指先が離れ、椎葉さんが上体を起こした。
「いいよ。ユキくんが望むなら、その子も一緒に解放してあげる」
この時の判断が後にどれだけ自分の人生を変えることになるか、この時はまだ気付くことが出来なかった。たくさんの感情に流されて、周りが見えなくなっていた俺は椎葉さんの手を取ることしか出来なかったんだ。
……知らない人に着いていっちゃだめだよ、甘い話には裏があるんだよ。
遠い昔に、何度もそう言っていたお母さんの声がどこかで聞こえたような気がした。
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