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「椎葉さん」
「ここは気に入ってもらえたかな?」
「は、はい…すごく綺麗で、俺なんかには勿体無いくらいです」
食器を片付け、俺は慌てて椎葉さんを中に招き入れた。ここはもともと椎葉さんの家なのだから俺が招き入れるのも変な話なんだけど。
「…お茶でいいですか?」
「頂くよ」
備え付けのキッチンでお湯を沸かし、部屋に用意してあったお茶を淹れる。急須から出てくるお茶は鮮やかな緑色でとてもいい香りがした。
「どうぞ」
「ありがとう」
自分の分のお茶も淹れて椎葉さんの向かい側に腰を下ろす。椎葉さんは今日もビシッと決まった高そうなスーツを着ていた。
「ここの生活については三國から聞いた?」
「あ、はい」
「三國のことだから伝え忘れは無いと思うけど…なにか聞いておきたいことはある?」
「あの、離れから出ちゃいけないって言われたんですけど、いったい…」
「ああ、庭になら好きに出てくれて構わないよ。でも、屋敷には入らないでくれるかな?」
そう言った声色は優しいのに、俺を見る目が至って真剣だった。椎葉さんの穏やかな表情の下には確かな威圧が存在している。俺は思わずごくりと息を飲んだ。
「屋敷にはいつも私がいるわけじゃないからね。知らないうちに怪我でもされたら困るし」
「あ、はい…そうですよね。迷惑かけちゃいますしね」
椎葉さんの威圧にいたたまれなくなった俺は、気分を紛らわせるためにもう一度湯のみに口を付けた。熱いお茶が胃に落ちて行く感覚がやけにはっきりと感じられる。俺がお茶を煽っている間も、椎葉さんは変わらずこちらをじっと見つめていた。
「それと、今日のように此処へ来る時は三國か誰かを通してユキくんに連絡を入れる。私が来るという連絡を聞いたら…わかるね?」
「…っ、はい」
その言葉に胸がどきりと跳ねた。
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