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Hollow
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ここに来て三週間が経った。この三週間の間に、俺は何度も椎葉さんに抱かれた。
椎葉さんは大体夜にやってくるが、たまに仕事の合間を縫って昼間やってくることもあった。そんな日はいつもよりも展開が早く進み、セックスが終われば椎葉さんは早々と仕事に戻っていく。
お仕事として椎葉さんに抱かれていた時と比べて、俺たちの関係は少しずつ変化していた。
というよりは、俺の気持ちが変化し始めていた。
「今日は、椎葉さん来るのかな…」
限られた空間と限られた人との触れ合い。そんな狭い生活空間に外からの風を入れてくれる椎葉さんの訪問を、心待ちにしている自分が生まれ始めていたのだ。
睦言で交わす他愛のないやりとり。そんな些細なことが、いま、ここで生きる俺のささやかな楽しみになっていた。
***
「花、ですか?」
「そう。明日庭師を呼んであるから、植えてほしい花があれば言いつけるといい」
「そんな…俺、花とか詳しくないんですけど…」
「詳しくなくても、何色の花が好きだとかならあるだろう?折角のユキくん専用の庭なんだから、ユキくんの好みに作らなければもったいないよ」
激しいセックスをした後、今夜も俺と椎葉さんはベッドの中で身を寄せ合っていた。
「好きな色だけでも伝えておけば庭師が考えて植えてくれる。だから、明日までにしっかり考えておくんだよ?」
「…はい」
情事の後で汗ばんだままの体を椎葉さんに擦り寄せれば、その綺麗に引き締まった体に抱き寄せてくれた。歳上の椎葉さんの体は白くて薄い俺の体と違って頼りがいがある。鍛えてるんですかと前に尋ねてみたら、ユキくんに見せるためにねとからかわれた。
「椎葉さん…お風呂…?」
「ああ、今日は入っていくよ。ユキくんも一緒に入る?」
「…はい」
「そう。それじゃあ汗が冷える前に行こうか」
椎葉さんが起き上がるのと同時に抱き起こされ、脱ぎ散らされた服を拾いながら浴室に向かう。
「服は足りてる?」
「あ、はい。いつも高そうな洋服をありがとうございます」
洗うものを選びながら洗濯機に服を入れていると、片足を浴室に踏み入れた椎葉さんがそう声をかけてきた。
いま拾っているこの服も、明日着るであろうあの服も、全部椎葉さんに買い与えられたもの。たった三週間で俺が持ってきた服よりも椎葉さんから与えられた服の方が多くなってしまった。
「それなら良かった。これから寒くなるだろうから、今度は暖かい洋服を買ってくるよ」
「…ありがとうございます」
「さあおいで、洗ってあげる」
食事も、洋服も、住む家も。全て椎葉さんが俺に与えてくれている。
そんないまの自分はまるで、甘やかされているようで都合のいいように飼い慣らされているようだと他人事のように感じることもあった。
そんなことを思っても、俺にはここしか居場所がない。ここでしか、生きられない。
「椎葉さん…」
それならばこの人を受け入れ愛されようと、俺の心は柔らかく開きつつあった。
もう、誰かに捨てられるなんて耐えられそうになかったから。
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