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「騒いだらお腹空いちゃったな。お昼も過ぎてるし、何か食べに行く?」
「いや帰るよ。同居人が待ってるだろうから」
「同居人って黒猫でしょ?今までそんな心配してなかったじゃない」
「アンジュじゃなくてもっとでかいのが今一緒に住んでて…とりあえず今日は帰る」
「ふーん」と沙曜がつまらなさそうに呟いた。靴を履いて部屋から出ると、沙曜は半分泣きたそうな笑顔で手を振ってくれている。
「またね」
「おう。また近いうちに」
もしかしたらこの後沙曜はまた泣くのかもしれない。でもそれはお互いに別の道。新しい一歩だ。
***
「ただいま」
家に帰ると、リビングでなぜか今にも泣き出しそうな顔をした雪夜が俺を待っていた。
「なに、どうしたの」
「ヨ……じゃなくて、アンジュが。アンジュが変なの吐いちゃったんだ」
「変なの?」
おろおろと慌てる雪夜が指差す先にあったのは、ティッシュに包まれゴミ箱に入った毛玉だった。
「なんだ毛玉じゃん。猫はこれ吐くの普通だから大丈夫だよ」
「毛玉…?」
「そう。こいつらよく毛繕いしてるだろ?飲み込んだ毛をこうして吐き出すんだ」
「そうなんだ」と雪夜が横でほっとため息をついた。
色白で透明感のある肌と綺麗な黒髪。この歳の男ならもう少しスレていてもおかしくないのに、雪夜は触れることを戸惑ってしまうくらいの清純さを滲ませていた。
誰にも言えないようなことを、させられていたはずなのに。
「…沙曜さんどうだった?」
「え、ああ。一応納得してはくれたみたい」
「…そっか、良かったね」
よしよしとアンジュを撫でる雪夜の横顔が少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。そんな事を思った時にはすでに手が動いていて、横顔にかかる雪夜の黒髪を耳にかけてしまっていた。
「な、なに…」
「あ、いや。つい…」
訝しげに俺を見る雪夜の視線が居た堪れなくて、ぎこちなく手を離した。
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