アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
13
-
「探してる人がいるんです」
「あ?初対面の俺がわかるわけねえだろ」
煙草の煙をふーっと吐き出し、男はめんどくさそうな顔をしながらそう言い捨てた。
「そいつはあなたから名刺を貰ったはずなんですけど」
「色んなやつに渡してるからわかるわけねえって…無茶なこと言う兄ちゃんだな」
「黒髪で、背は俺より少し小さくて、綺麗な顔立ちをした男です。そいつとはここから二十分くらい行ったところにある屋敷で出会いました」
ここまで言って、目の前の男の眉がピクリと反応を示した。やっぱり。この人は雪夜を知っている。
「あの、幸薄そうな兄ちゃんのことか?」
「幸薄……はい、まあ確かにそう見えますね」
幸薄そうなという表現に少しだけ笑ってしまう。雪夜にとって幸せだった日々は一瞬にして崩れ去り、悪い大人たちからたくさんの物を奪われてしまった。家族に捨てられ、売春に身を染めさせられ、ようやく幸せになれると思って信じた男にも裏切られた。
たくさんのことに傷付けられながら生きてきた雪夜は、存在そのものがなんだか儚い。どこか達観しているような雰囲気で毎日を過ごしていた雪夜は、確かにそう見られても仕方がないのかもしれない。
「なんで兄ちゃんがあいつを探してるんだ」
「今朝まで一緒にいたんです。俺があの屋敷から連れ出しました」
「は?あんた、あの人のもの盗んだのか?」
「ゆきやはあの人の“もの”じゃない。ゆきやを幸せにするのは、あの人じゃなくて自分だと自信があったからやりました」
まるで途方もない馬鹿を見るような目で男は煙草を吸った。そして二度ほど煙を吐いた後、男はゆっくりと口を開いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
190 / 193