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気遅れしそうな青山の雑貨屋さん。
店内は、高そうなものがいっぱい置いてあった。
どうしよう、高い・・・。
「あら、山野先生。」
「ご無沙汰しております。」
後から聞いた話だけど、このお店、大学病院時代の恩師の奥様が経営されているお店らしかった。
「プレゼントですか?」
「いいえ、今日は自宅用に買う予定です。」
「まあ。」
ころころと鈴が鳴るように笑うお店の人は、上品さが滲み出ている。
置いてあるカップも、想像していた値段よりも高くて、今更ながらに自分と山野さんとの差を感じさせられた。
「そのカップは、イタリアで買付けしたもので、」
おれなんかに説明されても、頭の中を素通りしていくのに・・・。
「どうした?」
「あ、ううん。」
7000円のカップなんて、怖くて使えない。
山野さんの視線を感じながら、そっと棚に戻した。
「箸はどれが良いかな?」
お箸の金額も結構した。
「これは屋久杉を使ったもので、滅多に手に入らないものですよ。」
「へぇ・・・軽いなぁ。」
確かに良いものだとわかる。
山野さんの横で俯いた。
「これは輪島塗りのもので、」
お箸だけで目が回りそうだった。
「気に入ったもの、あった?」
奥さんが離れた隙に、山野さんが聞いてくれたけど、上手く返事が出来なくて曖昧に笑った。
改めて、収入の差って、凄いんだなって思った。
おれの年収なんて450万切るくらいだし、そりゃお医者様なんて1000万超えてるだろうけど。
男として、何だか情けなくなった。
「・・・出ようか。」
「え?」
山野さんが不意に手を引いた。
「また寄らせて頂きます。」
「あら、またいらしてね。」
奥にいた奥さんが出てきてくれて、ご挨拶してくれたけど、ぎこちなく笑うので精一杯だった。
本当は、何か買わないといけなかったのかもしれない。
そう思ったけど、山野さんの温かい手が嬉しくて、おれは唇が震えて何も言えなかった。
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