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まるで、蜘蛛の糸みたい。
山野さんに縋って生きているみたいに感じて、胃が痛かった。
手を伸ばしても、伸ばしても、届かない。
おれは、卑屈で、器が小さくて、ほんの少しのことで傷ついてパニックを起こす。
山野さんと出逢わなければ、知らなかった。
こんな自分がいるなんて、知らなかった!
「・・・ぃた。」
キリキリ痛むのは、胃なのか胸なのか。
心臓がバクバクするのは、走ったせいなのか、焦燥感からなのか。
足がふらついて、息が切れて。
もうすぐ山野さんの住む駅なのに、遠くて、遠くて。
「・・・あれ、甲斐くん?」
呼ばれて顔を上げると、松島さんが心配そうな顔をして立っていた。
「え、大丈夫?!」
「・・・だい、じょうぶです。」
車内のLEDの光が目に入って、クラッときた。
「わっ!?」
・・・ダメ、吐きそう。
電車の扉が開いた瞬間、飛び出した。
トイレ、どこ・・・?!
「甲斐くん!トイレ探してるよね?!あっち!!」
車椅子のマークが付いたトイレに連れて行ってもらって、みっともなく便器にしがみついた。
松島さんが背中をさすってくれているの、断れないくらいに限界だった。
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