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あ、ヤバイ・・・。
10月は、体調を崩しやすい。
たまに思い出したように夏の陽気になったり、冬の入り口が見えるような冷たい雨が降ったりする時期だから、気をつけていたはずなのに。
くしゃくしゃになったスーツの身ごろを引っ張りながら、すっかり暗くなった室内を見渡した。
風邪かも、頭が痛い。
おでこに貼るやつ、あったっけ・・・。
山野さんに逢いたい気持ちが大きいけれど、風邪をひいてしまったのなら、話は変わる。
万が一、お医者様をしている山野さんにうつってしまったら、後悔してもしたりない。
鼻を啜りながら、のそりと立ち上がった。
ポケットに入れっぱなしの体温で温められたスマホを取り出して、通知を確認した。
「あ。」
『今朝はゴメン。良かったら、今夜一緒に食事に行こう。』
山野さん!!
泣きたくなるくらい、嬉しかった。
まるで蜘蛛の糸が、天国の光を浴びて黄金に光っているみたいに輝いているのが分かった。
山野さん!!
山野さん、山野さん!!
糸に手を伸ばそうとして、出来ないことに気付いた。
なんで風邪ひいちゃったんだろう。
ふわりと浮いた気持ちが、萎びていくのが分かった。
目やにでガサガサの目尻を擦ると、膝を抱えた。
「でんわ、しよう。」
おれは、塞ぎ込みそうになる気持ちを抑えて、履歴の一番上にある山野さんの名前をタップした。
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