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「やあ、調子はどうだい?」
「か、課長!」
予想もしていない課長の出現に、思わずよろけた。
「わ!」
よろけたおれを支えようとしたのか、課長が手を伸ばしたけれど、そんなの無理すぎて体を捻って体勢を整えた。
「だ、大丈夫です。」
いやいや、嘘でしょ?!
「な、なんで?!」
「いや、体調悪そうだったし、調べてみたらご近所さんだったからね。」
いやいや、遠慮して。
「いや、中山課長・・・。」
「ん?」
全く悪気のない顔に、げっそりした。
と、階段から足音が近付いてきた。
その人は扉が開いている事に気付いたのか、早足になった。
「甲斐くん!?」
「山野さん・・・!」
夢じゃなかったんだ。
山野さんがスーパーの袋を下げて足早に来てくれた。
山野さんが、課長を下から上まで確認した。
「あの、山野さん。中山課長です。」
「こんばんは、友人の山野です。」
「中山です。・・・甲斐さん、看病してくれる人がいたんですね。失礼したよ。」
山野さんの目が課長に向けられた。
「甲斐は熱が出ていますので、お引き取り頂けますか。」
「ああ、もちろんです。」
頷いた課長は、手に持っていたレジ袋をおれに渡した。
「これ、良かったら。」
「あ、ありがとうございます!」
受け取った袋は、ずっしり重かった。
「急ぎがなければ、明日も休みなさい。」
「は、はい。」
山野さんから、その袋を取られた。
山野さんの目が、課長に『さっさと帰れ』と言っていて、おれは背中に汗が伝うのが分かった。
い、一応、おれの上司だから!
「じゃあ、甲斐さんをよろしくお願いします。」
山野さんがニッコリ笑った。
「当然です。山中さん。」
な、中山!!
思わず口を手で覆った。
間違えられた課長は、慣れているのか何も言わずに帰って行った。
「・・・はぁ〜っ、寿命が縮まった!!」
「ったく、何だよ、アイツ!」
おれから受け取ったレジ袋を、山野さんは乱暴に台所のシンクの上に置いた。
「おれもびっくりした。まさか課長がやってくるなんて思ってなかったから。」
「山中め!」
「中山ね。」
訂正すると、山野さんはおれに向き直った。
「甲斐くん、何もされてない?」
「?」
何もって、何?
「レジ袋受け取っただけだけど。」
「そっか。山中から普段、セクハラされてないか?」
「中山ね。特には・・・。飲みの誘いは多いけど。」
チラリと寺田さんの言葉がよぎった。
「多分、大丈夫。」
疑わしそうな顔をした山野さんは、おれのおでこを触ると、ベッドに追いやった。
「栄養とれるもん作るから、寝てて。」
聞いたら、課長の持ってきた袋にはスポーツドリンクと栄養ドリンク剤が入っていたそうだ。
「このドリンク剤は飲まない方が良い。俺らもだけど、薬剤師が絶対飲まないタイプのヤツなんだ。」
「え、そうなの?」
「そう。」
という訳で、スポーツドリンクのみ冷蔵庫に収まった。
「だいたい風邪薬とドリンク剤なんて一緒に飲んだら危険なんだ。ドリンク剤は、絶対に薬と併用しないことと、飲んでも非常用として飲むくらいしかダメ。こんなにたくさん持ってきたら、毎日飲んじゃうでしょ。体に悪い。」
なるほど。
「だから、これ、俺が持って帰るから。」
「あ、はい。・・・すみません。」
なんだか、おれが叱られている気がする。
「ほら、寝て寝て。」
「はい。」
大人しくベッドに入った。
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