アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
29
-
「甲斐くんは可愛いから、心配だよ。」
「へ?」
言われた意味が分からずに、首を反対に傾げた。
「もう!そういうところ!!」
グイッと頬っぺたを引っ張られてビックリしたけど、変な顔になってる自覚があって、ふたりで笑った。
「食べたら寝る!」
「はい!」
山野さんが持ってきてくれた薬は市販薬だけど、病院でも処方されるものだった。
「本当なら俺がオーダーしたかったけど、さすがに出来ないから。」
「ううん、ありがとうございます。」
市販薬は、お医者様が出してくれる薬の量のものは出回っていないのが普通だ。
例えば、ほんの少し含有量を減らしたり、或いは一回に飲む量が減っていたりする。
それだけ濃い(説明に弊害があるかもしれないけど)成分を患者さんに出す責任がお医者様にはある。
そして、薬剤師さんはお医者様が出したお薬を確認して、患者さんにほかに服用している薬がないか、飲み合わせなんか最終チェックしてくれる。
命に関わるお薬だから、薬剤師さんとお医者様とのバトルも実はあったりして。
そういう舞台裏を知っているから、本当に医療の現場で働いている人って尊敬する。
おれなんて、機械を売ることで生活してるけど、それを使う人たちは、本当に真剣で、損得なく自分の命を削りながら働いてくださってると思う。
「・・・山野さんは、なんでお医者様になったんですか?」
「んー・・・、そうだな。」
山野さんの家は、お医者さんの家庭ではなかったそうだ。
「友だちを怪我させたからかな。」
「え。」
山野さんは、青くなったおれを見て笑ってくれた。
「大丈夫。その人は元気にしてる。」
頭を撫でられた。
「また今度、ゆっくり話すよ。今は寝よう。」
「はい。」
ごめんなさい、と言おうか迷った。
聞いちゃいけない話だった気がしたからだ。
でも、謝るのも気が引けて、おれはギュッと目を閉じた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 108