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JR目黒駅に降りた。
この駅は、地下鉄や東急線も通っていて、アクセスに便利だ。
駅前には飲食店がたくさんあるけれど、あんまり足を踏み入れたことがない。
東京に住んでいても、営業に出る地域が違えば土地勘は無いし、おのぼりさん状態でキョロキョロしてしまう。
ちなみに目黒駅は目黒区じゃない。となりの品川区に属しているんだ。
山野さんが紹介してくれた病院は、西口を出た右側の雑居ビルの中にあった。
・・・おいしそうな匂いがする。
胃カメラを飲む可能性を考えて、朝食は摂っていない。
お腹はぺこぺこなのに、病院に行くまでにお蕎麦屋さんの誘惑があった。
どうしよう、めちゃくちゃ美味しそう・・・。
蕎麦の茹でた匂い、出汁の香りたまんない。
唾液を飲み込んで、目的のビルに入った。
「・・・たかお消化器内科クリニック。」
エレベーターのボタンを押した。
------------※ ※ ※------------
「山野先生の紹介ですね。今朝、電話がありましたよ。」
たかお先生は、女性のドクターだった。
てっきり男性の先生で、高雄さんだと思っていたから、内心びっくりした。
いくつかの問診と触診をして、たかお先生は笑った。
「私の見立てでは、カメラを使うほどのことは無さそうだけど、山野先生から隅々まで調べてくれって言われたの。どうされます?」
面食らった。
「えっと、その・・・。」
どうしよう。
カメラ、飲まないで済むなら飲みたくないけど・・・。
先生は、花が咲いたように笑う可愛い人だった。
「えっと・・・。」
言い淀むおれを辛抱強く待ってくれている。
迷った末、カメラを飲むことにした。
「えと、お願いします。」
「分かりました。準備がありますので、ロビーでお待ちくださいね。」
「はい。」
病院には、処置室とカメラを入れるための撮影室があった。
職業病だとおもうけど、どこのメーカーの機器を入れているのか自然にチェックしてしまう。
あるあるだけど、病院の設備って研修医のときに使っていたメーカーを開業するとき選択する人は多い。
だって、使い方やクセも分かるからだ。
だから、おれたちの営業は必死だ。
大きな病院で採用されれば、独立する先生が出た時、次の商談も簡単だからだ。
処置室に呼ばれて喉への麻酔や、注射(ついでに血液も取られた)をされながら、ついついキョロキョロしてしまった。
「甲斐さん、緊張されなくて大丈夫ですよ。」
あ、看護師さんから緊張してると思われた。
「はい。」
おれは大人しく頷きながら、麻酔のせいで飲み込めない唾をティッシュに吐き出した。
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