アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
46
-
帰りもおれが運転した。
山野さんの運転が怖いということもあるけれど、一番は、冷静になりたかったからだ。
まず、明日からのことを考えなければならない。
車に乗せた荷物は、かなり多かった。
二度と戻らない覚悟の家主の家出だ。
「あー・・・、甲斐くん。」
「はい。」
チラリと横を見ると、山野さんが笑っていた。
「大丈夫。俺、養えるから。」
「ふふ、ありがとうございます。」
笑い返したおれを見て、山野さんはゆっくりと伸びをした。
「久しぶりの労働だったよ。今夜はぐっすり寝れそうだ。」
「本当にありがとうございました。ひとりだったら、どうなっていたか。」
あの写真は、山野さんの胸ポケットに入っている。
「・・・仕事、辞めちまえ。」
多分、それが一番良い。
だけど、
「辞めるにしても引き継ぎがいります。納品待ちの病院様も、見積もり提出中の病院様もあります。」
ずっと働いてきた会社だ。
いきなりおれが辞めてしまえば、会社の信用が失われる。
愛社精神なんて、そう無いと思っていたけれど、いざ辞める方向を考えた瞬間、好きだった事に気付かされた。
「・・・なら、戦う?」
「戦うって?」
山野さんが、運転席側に身を乗り出した。
「告発するってことだよ。」
思いがけない言葉に、おれはヒュッと息をのんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 108