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翌朝、出社した。
死ぬほどドキドキするし、胃もキリキリする。
でも、今日勇気を出さないと、もう会社に行くことが出来なくなりそうな気がした。
「無理だと思ったら、即刻、帰ってきていいからね。」
「山野さん、ありがとう。」
本当は、いますぐにでも回れ右して帰りたい。
でも、負けたくなかった。
「あ!甲斐さん!」
「・・・寺田さん。」
女神様のように見えた。
「甲斐さん、大丈夫?顔色悪いわ。」
「大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました。」
寺田さんが一緒に歩いてくれるなら、安心だ。
いつ中山課長に声を掛けられるかと、ドキドキしていたからだ。
きっと寺田さんがいたら、接近しないはず。
「こっちの駅だったっけ?」
「ううん、今日は特別。一駅歩いて地下鉄に乗ってみようかと思って。」
「へぇ・・・。彼女さん家からかなって思ったのに。」
ふふ、悪戯っぽい顔は、おれにだけ見せてくれる。
こういう時は、お姉さんの感じがしない。
「似たような感じかもですよ。」
「へえ!良い事聞いちゃった。」
「内緒です。」
軽口で、かなり気持ちが晴れた。
「寺田さんは、こっちでしたっけ。」
「そうなの。駅から結構歩くから、ちょうどいい運動よ。」
ドキッとした。
背後から、嫌な視線を感じたからだ。
・・・どうしよう、課長かも。
怖いもの見たさで、携帯を探すふりをしながら、少しだけ背後を見ると、課長が見えた。
「・・・さん、甲斐さん?」
「あ、ごめんなさい、寺田さん。なんの話でしたっけ。」
「もう!」
寺田さんが笑っておれの肩を打つ仕草をしたけど、愛想笑いをすることが精一杯だった。
------------※ ※ ※------------
『へぇ、やっぱりつけてるわけね。』
お昼前に今朝の視線を、山野さんに報告した。
「うん、感じました。」
『今は?』
一階の自動販売機に寄りかかりながら、周囲を見渡した。
「大丈夫です。」
『ふぅん。切り出せる?』
切り出すのは、退職したいっていう話のことだ。
「頑張ってみます。」
『無理に今日じゃなくてもいいからね?』
そう言ってくれるけど、手術が予定に入っていない日はそうそうない。
今日のチャンスを逃したら、もう仕事に行く気力が無くなる可能性があった。
「ううん、やります。早くしたいんです。」
早く決着をつけたい。
もうこんなビクビクするの、嫌だった。
『分かった。じゃあ、連絡待ってる。』
「はい、連絡しますね。」
そう言って、通話を切った。
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