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「甲斐さん、どうしたの?」
手が震えているおれを見て、寺田さんが小さな声で声を掛けてくれた。
「!!!」
メモを見られないように回覧をひっくり返したけど、寺田さんには分かったようだった。
「・・・ね、甲斐さん。今日、ランチに出よう?」
「寺田さん・・・。」
おれを安心させるように、微笑んでくれた。
「大丈夫、甲斐さんの奢りだから。」
「ふふ・・・、おれの奢りになるんですね。」
「そうよ、気が楽になるでしょ?」
寺田さんが毎日、手作りのお弁当を持ってきていることを知っている。
おれが彼女のお昼を無駄にする事を、あえて気に病まないようにしてくれた、素敵な女性だ。
「はい、じゃあ少し遠くのお店に行きましょう。」
「うん、楽しみ。」
おれ、寺田さんに救われてる。
「寺田さん、ちょっと。」
「はい!」
他の営業に呼ばれて行ったけど、みんな寺田さんの能力や人当たりの良さに惚れ込んでいた。
おれも、彼女無しではスムーズに業務はこなせないと思う。
奢り、か。
寺田さんと初めてふたりだけで食事をする。
女性ってどんなものが好きなんだろう?
ひっくり返していた回覧を見つめた。
今日、決着が着くはず。
大丈夫、山野さんがいてくれるから。
おれはメモを抜き取ると、クシャッと丸めてポケットに突っ込んだ。
そしてボールペンを取り出すと、メモ帳にこう書いた。
“弥平太という居酒屋があります。友人の薦めなのですが、もしよければ予約を取ります。“
回覧に挟んで、課長に持って行った。
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