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「・・・冷めないうちに、甲斐さん、取ってください。」
「あ、はい。すみません。」
シラッとした空気が流れた。
グスグスと鼻を鳴らす課長を見ていると、本当にストーカーだったのか怪しくなってきた。
「あの、おれ、本気で好きなんです。」
「・・・。」
ふたりで熱々の牛を頬張った。
和風ソースがかかっている。奥歯で噛むと、牛の旨みが口の中で広がった。
美味しいものを食べると、気持ちが落ち着くのはなんでだろう。
山野さんが、この居酒屋を薦めてくれた意味が分かった。
「・・・分かっていました。おふたりの仲を裂けない事くらい。」
分かって、くれた?
もうストーキングしない?
課長も落ち着いたのか、静かに呟いた。
「だって、ずっと一緒にいた。」
「・・・え?」
思わず目をパチパチさせた。
「お昼もふたりで消えたし、間違いなく付き合ってるんだなって思った。」
は?
え、ちょっと待ってちょっと待って!
「寺田さんの甲斐さんを見る目が愛に満ちてる!おふたりが愛し合ってるのは、見てて分かりました!!」
襖の奥で皿がひっくり返った音がした。
おれはあまりの事に、呼吸が出来ずに倒れそうになった。
「い、いやいや、課長待って。」
「待てません。わたしも寺田さんのことが好きです!」
ガタガタと襖が揺れた。
「・・・横恋慕してすみません。気持ちの整理を付けるために、玉砕覚悟で告白をさせてください。」
い、息が出来ない。
課長が好きなのって、おれじゃなくて、寺田さん!!
恥ずかしくて、顔を両手で覆った。
「お、おれ・・・っ!」
恥ずかしい!
どれだけ自意識過剰なんだ!!
だいたい、男の人が好きな男性の数は少ないのにっ!!
「寺田さんに告白させてください!それ以上は望みません!」
どうぞ!
どうぞ、してくださいっっ!!
いやいや、嘘でしょ。
こんな結末ってある?!
おれは恥ずかしさのあまり、消えてしまいそうになった。
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