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「うわぁッ!」
膝を横から蹴られた松島さんは、床にもんどり打った。
蹴った人物は、大好きな大好きな山野さんだ。
「山野さんッ!」
人前だっていうことは、もう頭に残っていなかった。
思わず山野さんの首に抱きついた。
「甲斐くん、大丈夫?」
「うんっ・・・!」
嬉しい、嬉しい。
山野さんだ。
山野さん、山野さん!
「甲斐くん、ちょっと離れて。そのボケと話があるから。」
耳元で言い聞かせられて、ハッとして腕を解いた。
胸ぐらを掴まれていた男性は、連れの女性に介抱されている。
山野さん、・・・もしかして怒ってる?
笑顔だけど、目が怒っていた。
え、どうしよう。
おれ、怒らせちゃった?!
「甲斐くんへの話は、今夜ゆっくりね。今はソイツに話がある。」
ソイツって言った瞬間、山野さんの顎がしゃくられた。
膝の痛みで呻いている松島さんを、指差すのも嫌らしい。
「う、うん。」
白衣を着たお姉さんがスッと登場して、胸ぐらを掴まれていた男性に話しかけた。
「大丈夫ですか?どこか苦しいところはありませんか?」
・・・なんだか見覚えのある背中のような気がする。
「ゲホッ!・・・だ、大丈夫です。」
「大丈夫そうではないわ。お名前言えますか?」
「へ?!な、中山です。」
そう、カップルは中山課長と寺田さんだ。
山野さんに連絡をした時に、一緒に連絡をしていた。
さすがにおれも、ストーカーとふたりっきりは怖い。
仲間がいるから、こんな無謀ともとれる暴挙にでれたのだ。
だいたい、運動神経は良い方だ。
バッティングもピッチングも、コツさえ掴めばある程度は出来る自信があった。
それに、卓球は中学のとき部活に入っていたし、市の大会では決勝戦まで進んだこともあった。
だから、全く負ける気がしなかった。
ただ、油断させて勝利を獲るはずが、思いの外、苦戦させられた。
これは、おれ自身の過信が招いた結果だった。
「中山さん、喉に擦過傷が出来ているわ。それに首の後ろが腫れている。後から痛むかもしれません。」
・・・たかお先生のような気がしてならない。
ちょっと大袈裟に診察している感じが、おれたちの味方っぽいからだ。
「おい。」
山野さんのめちゃくちゃ怒っている声に、慌ててふたりを振り返った。
ヒッ!!
背中から、怒りのオーラが見える!
おれは悲鳴を飲み込むために、思わず手で口を押さえた。
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