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「お、追いますか?!」
中山課長の言葉に、おれは首を振った。
逃げても職場も分かっているし、たかお先生に釘も刺された。
もう、きっとこれ以上は何もしてこないはずだ。
「もう大丈夫だと思います。怪我されていませんか?」
「怪我はありません。」
おれは中山課長を。
山野さんは、たかお先生を助け起こした。
「高尾は案外、怖いのな。」
「助けてもらって、それはないでしょ。」
ふたりの会話を聞きながら、おれは中山課長に頭を下げた。
「殴られそうになったとき、肝が冷えました。」
「ああ、流石にビックリしました。」
課長、申し訳ありませんでした。
側の寺田さんにも頭を下げた。
寺田さん、巻き込んでごめんなさい。
ギャラリーは、まだ全員ではないものの残っている。
知り合い同士とバレるのは、得策ではなかった。
「あの、お礼をさせてください。」
「それは俺からもお願いします。うちの甲斐が申し訳ありませんでした。」
山野さんも頭を下げてくれた。
「これから職場に戻る必要がありますので、改めてまた伺います。」
あ!
山野さん・・・お仕事中だったのに。
「あ、あのたかお先生も、すみませんでした。」
「いいのよ、今度ゆっくりね。」
白衣を脱いだ たかお先生は、それを山野さんに押し付けた後、片手を挙げて去って行った。
「あ、あの、山野さん!」
「甲斐くん、これから甲斐くんは真っ直ぐに家に帰るんだ。」
硬い口調に、背筋が伸びた。
「分かった?」
「は、はい!」
思わず敬礼したおれは、びくびくしながら山野さんを見た。
「はい、帰る!」
「はい!」
おれはバダバタしながら、バッティングセンターを後にした。
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