アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
78
-
ご存知だろうか。
マジシャンが拳の中に仕込んだソレを空中に放つ事で、綺麗に放物線を描いて広がる、美しい蜘蛛の糸。
アメコミの主人公は、手首から蜘蛛の糸を放射するが、甲斐はマジシャンよろしく拳の中で握り込んでから、解き放った。
その蜘蛛の糸は、くもの巣投げテープと言う。
ネットでも買えるが、いまでは100均ショップのパーティーグッズコーナーにも置いてある。
会社の慰安旅行で使うつもりで買っていた、投げテープの存在を思い出した甲斐は、この投げテープにあるものを仕掛けた。
「ぶぇっくしょい!!」
「ごめんなさい、富永さん!!」
そう、コショウだ。
小さくしたティッシュの中にコショウを詰めて、一緒に握りしめていたから大変だ。
見事に着弾した富永さんは、ゲホゲホと咳き込むやら、クシャミをするやら、鼻水が止まらないやらで大騒ぎだった。
「甲斐くん、これは?!」
「コショウです、山野さんどうしたらいいですか?!」
玄関に仁王立ちしていた山野さんは、慌てて台所の蛇口を捻った。
「甲斐くんは着替えを用意して!」
「はい!」
富永さんを抱えるようにして台所に連れて行った山野さんは、顔をしっかりと洗わせた。
「辛くても、絶対に目を擦らないで。」
「ふぇっ、くしゅん!!」
ああ、ちゃんとした服がない!
ちゃんとした服は、全て山野さんのお家に持って行った。
つまりこの家にあるのは、捨てるの前提のものばかりなのだ。
わぁ、富永さん!
重ね重ねごめんなさい!!
「甲斐くん、シャワーの蛇口ひねってきて。あとタオルある?」
「あります!」
タオルは山野さんのところのものを使うからと、全て置いていた。
「パンツ買いに行ってきます!」
「パンツは無くても死なない!シャワーの温度は大丈夫?!」
「オッケーです。」
狭い家を駆け回った。
「・・・お風呂に入って洗い流せば落ち着きますから、シャワーを浴びながらゆっくりと深呼吸してください。ひとりで入れますか?」
「ふぇっくしゅん!」
富永さんが泣きながら頷いた。
本当にごめんなさい!!
責任を持って、その服洗います!
脱衣を手伝って、湯気があがるお風呂に入ってもらった。
パタン。
扉を閉めて、山野さんを振り返った。
「あ、ありがとうございます!」
山野さんは厳しい顔で首を振った。
「犯人で確定?」
思いっきり首を振った。
「違ったんです。でも違うって分かった瞬間には、もうコショウが着弾してて。」
「・・・え?」
山野さんは、ぽかんとした表情になった。
「・・・違ったの?」
「はい、違ったみたいです。」
富永さんの脱いだ服から、携帯と財布を取り出して、洗濯機に入れた。
えっと、乾燥までっと。
「・・・とりあえず、向こうに行こうか。」
「はい。」
掃除機もかけなきゃ。
悲惨な現場に戻った瞬間、遠慮がちに玄関の扉が開いた。
「・・・こんにちは〜。」
「ええ?!」
おれは飛び上がるほど驚いた。
そこには、想像を超えた姿のある人物が立っていたからだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
78 / 108