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嘘でしょ〜ッ!!
寺田さんに押された衝撃で体が横に浮いて、植え込みに突っ込んでいく。
小さな鋭い枝が体に突き刺さるのを覚悟して、おれはギュッと目を閉じた。
「甲斐くんッ!!」
今度は前から強い力で押された。
びっくりして思わず目を見開いた。
「あ、あ、あ・・・ッ!」
山野さんが突き飛ばしたんだ。
山野さんの両手を見ながら、アスファルトに叩きつけられるのを覚悟した。
!!
体に受けた衝撃は、僅かだった。
「甲斐さんッ!」
おれの背中を支えてくれたのは、中山課長だった。
〜〜ッ!!
「た、・・・助かっ・・・た。」
腰が抜けて、力が入らない。
課長に支えられながら、ズルズルと地面に座り込んだ。
「甲斐くん、怪我はない?!」
山野さんの言葉に頷くことで精一杯で、はぁはぁと息をついた。
「て、らださん!甲斐くんを殺すつもりですか!」
「ごめんなさいッ!思わず浮気を止めなきゃって思って。」
「どういうことだ?」
山野さんが鋭い目で寺田さんに迫った。
おれは課長に背中をさすられながら、心臓が落ち着くのを待っていた。
「と、富永さんと甲斐さん、お付き合いしてるから。」
「なに?!」
いやいや、ナイナイ!!
ぶんぶんと首を振った。
「・・・そうだったんですね。」
課長〜!納得しないで!!
びっくりしすぎて声が出ない。
出ないけど、違う事を伝えたくて、めっちゃ首を振った。
「あ!ごめんなさいッ!内緒だったんですよね。」
やめてー!
事実無根!
絶対に違うからッ!
手を合わせて謝る寺田さんが、めちゃくちゃ憎たらしく思えた。
今までこんな気持ちになったことなんて、無かったのに!
「甲斐くん・・・。」
「ち、・・・違ッ!」
違うの!
絶対、それ違うし!
山野さんの悲しそうな表情に、おれは太ももをギリギリとつねった。
力の入らない体を起こすためだ。
頬を叩いて、必死に立ち上がった。
「山野さん、誤解です。おれは、山野さんしか見てないし、付き合ってません。」
寺田さんの話は、事実無根の話だ。
「それに、富永さんは好きな人がいます。」
これ以上は本人を前にして言えないけど、富永さんは寺田さんのことが好きなのだ。
それは山野さんにも話してある。
こんなところでカミングアウトすることになるとは思ってもいなかったけど、ここで話をはぐらかしたら一生後悔すると思った。
「山野さん、話を聞いてください。」
大きく息を吸った。
「おれは、山野さんが好きです。」
視野の端で、寺田さんがしゃがむのが見えた。
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