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突き。
それは、呼吸を止める程の衝撃を伴う危険な技だ。
例えそれが靴べらの攻撃で、そして、受け身がお相撲♡コスだったとしてもだ。
肝心の まわし部分は大事な部分より下の位置にあるから仕方がない。
富永が太っていたら。
あるいは、富永がもう少し身長が高ければ突きの位置は別の部分へとズレていただろう。
良い結果を生まなかった体型は、決して悪いわけではない。
医療機器メーカーよろしく、太った人は営業には居ない。
著しく不健康な体型は、説得力やメーカーとして良い印象を生まないからだ。
年に数回、歩け運動(一か月の歩数の実績で優劣を競う)で金券を賞品とした活動や、健康診断を利用したBMI良かったで賞(粗品プレゼント)などなど、会社あるいは組合で健康維持のための企画もある。
また、提携のジムがあり、社員やその家族は格安で運動することができる福利厚生もあった。
だから、甲斐をはじめ、ほかの営業マンも体型維持はそれなりに気をつけている。
富永も、もちろんそうあるべきと務めていた。
週に2回はジムに通い、ビールっ腹にならないよう腹筋だけは自宅ででも頑張っていた。
シックスパックとはいかないけれど、それなりにやっていたのだ。
なのに。
なのに、なのに。
「〜〜ッ!!!」
鍛えることの出来ない箇所。
普段下がっているモノが、衝撃で体の中にめり込む、脂汗と声も出ない強烈な痛みが、富永を襲った。
涙目で潤む視界には、ゆらゆらと誰かがいる。
いるが、顔を見る余裕も、次の攻撃を躱す力も残っていない。
富永は床に崩れ落ちた。
「・・・た、倒した?」
男の声が弱々しく頭上から降ってきたが、何度でも言うが、富永は見上げる力さえ無い。
息を止めて耐え忍ぶ事と、誰か背中を叩いて、上がったナニが落ちるのを手伝って欲しいということしか浮かばない。
そう、上がり切ったソレは、めちゃくちゃ痛いのだ!
・・・誰か知らねーが、殺すッ!!
その攻撃は、殺意を生む。
強烈なダメージを与える攻撃は、復活した時の怒りが半端ないものへと変貌してしまうのだ。
「よ、良かった・・・、守れた。」
良かった、だとぅ?!
ぶち倒す、絶対ぶちのめす!
富永の気持ちは整った。
あとは体が整えば、すぐ攻撃にうつる。
富永の視界に映る犯人の靴下は、穴が空いていた。
正確には、親指部分に空いている。
この、おはよう靴下野郎!!
富永は仙台出身だ。
靴下に穴が空いていることを、「おはよう靴下」と呼ぶ。
ぜいぜいと息を荒く吐きながら、ようやくおさまってきた痛みに感謝した。
・・・これでおはよう靴下野郎をぶちのめせる!
「えっと、縛んなきゃ。」
ヤツは、クローゼットの横に何故か置いてあった、荷物を括るビニール紐に手を伸ばした。
・・・今だ!!
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