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「・・・え?!」
さて、ここからは中山の視点だ。
コンビニから寺田嬢に手を引かれて、天にものぼる心地でアパートに帰ってきた中山は、ひとつ異変に気付いた。
「どうされたんですか?」
「あれ、あれです。」
廊下の、甲斐の部屋から遠くない場所に、枯れ果てた花を見つけたのだ。
それも、1輪というわけではない。
捨て置かれた日にちが異なるのか、枯れ方に差のある花が数本落ちている。
「・・・これって、甲斐さんが話されていた薔薇でしょうか。」
すっかり忘れていたが、そもそも甲斐さんのストーカー探しが目的のデートだったのだ。
バッティングセンター、そして甲斐さんのアパートに到着するまでは覚えていたのに、富永さんの出現ですっかり忘れてしまっていた。
寺田さんから、するりと手を離された。
ああぅ!
寺田さんの温かい温もりが消えて、中山は寂しくなった。
その寂しさを隠すようにしゃがんで花びらを確認すると、若干、色が残っているものがあった。
「・・・薔薇、ですね。」
「ええ、でも先程の話だとこの花を置いた人物は、あの人だったですよね。」
寺田さんと見つめ合った。
「写真と薔薇は自分だと、自白していました。でも、」
「もうひとり、GPSを使ってストーキングをしている人がいる。」
そして、山野さんの見立てだと、必ずアパートに現れるはずだと言っていた。
忘れていたけれど、甲斐さんのアパートには、今は力士の姿をした富永さんしかいない。
もし、ストーカーが、富永さんがひとり残っている様子を見たら、逆上しないだろうか。
そして富永さんは、あんな恥ずかしい格好では、外に逃げ出すことができない。
せめて、乳首がピンクでなければ・・・ッ!
あのピンクでツンと主張している乳首が、若干エロいのだ。
下半身のコミカルな作りと違い、妙にリアルな乳首は作り手の意思が感じられた。
・・・よほどの乳首好きなんだろう。
「課長。」
ピクッと肩が揺れた。
ヤマシイ事はないはずなのに、悪い事をしたような気分だ。
まるで、寺田さんの乳首を想像したようなバツの悪さで、中山は思わず俯いた。
「課長、富永さんが待っています。」
「あ、ああ。」
とにかく彼の無事を確認せねばならない。
そして、甲斐さん山野さんが帰ってきたら、改めて今後の対策を練らなければ!
「寺田さん、行こう。」
中山は寺田の手を握った。
その手は振り払われることもなく、しっかりと握り返された。
「はい。」
ふたりは真剣な面持ちで、甲斐の部屋の取手に手を掛けた。
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