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午前中は新しい商材の勉強会、午後は商品知識のテストが行われた。
学生の頃は、社会人ってテストもないし、良いなぁって能天気に考えていたけど、社会人になったら全然違うって事が分かった。
正直、毎日がテストみたいなものだと思うし、上の人からは『評価』っていう成績表が突きつけられる。
『評価』の基準って色々あって、単に営業成績だけが関係するわけじゃなくって、日頃の生活態度(遅刻とか、見た目の清潔さとか)や、先輩後輩たちとの接し方やら、うちの会社だけかもしれないけど、とにかく色んな事に気をつけないといけない。
お客様がお医者、医療関係機関だからなのかもしれないけれど、カジュアルデーなんてもちろん無いし、髭を伸ばしたりなんてこともあり得ない。
まだ学生の頃の方が、色んな面で自由があった気がする。
これが違う業種ならまた違ったのかもしれないけれど、逆にここに慣れたら、職場に何を着て行ったらいいのか分かんなくなるから、常にスーツが丁度いいって思っちゃうのは、だいぶ会社に毒されているのかもしれない。
で、最初の話。
営業職って結構、テストが多い。
ペーパーの(もちろんパソコンでやる試験もあるけど)試験もあるし、実地の試験もある。
実地の試験っていうと、お客様役と営業役に分かれて、セールストークしていくってやつだ。
話の出だしから、クロージングまで。
そりゃ本番が同じ流れで行くなんて無いけど、度胸をつけるにはちょうどいいし、他の人のセールストークも聞けて、勉強になる。
営業って結構大変だけど、めちゃくちゃ楽しい面もあるんだ。
成績あげれば、お給料に直結するし、自分のペースで仕事が出来る。
事務職みたいに、きっちり9時から17時まで机に齧り付く必要がないところも魅力のひとつだ。
とはいえ、今日の勉強会、商品テストは身が入らなかった。
ずっと頭にあるのは、山野さんのこと。
・・・帰り、寄ってみよう。
震えない携帯を胸ポケットに入れたまま、ため息を噛み殺した。
「甲斐さん。」
「はい!」
課長がテストの結果を見て顔を顰めている。
・・・だよね。
「資料を確認しなおしてください。再テストをします。」
「はい、申し訳ありません。」
社会人として、最低。
気持ち、切り替えて覚えなきゃ。
深々と頭を下げてから、おれは午前中に配布された資料に目を通した。
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