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「体調はいかがですか?」
ゾッとした。
昨日、家に来たのも、今、待ち伏せされたのも、気持ちが悪くて仕方がない。
「だ、だいぶ良いです。」
「そうですか、良かった。今日はゆっくり休んでください。」
顔が見れない。
ストーカーっていう言葉が浮かんできて、胃がヒリヒリ痛んだ。
「じゃ、すみません。急いでいますので。」
家に帰るだけだから急いでもいないけど、足が震えてきて一瞬でも早くこの場から逃げ出したかった。
もうこのパスケース、使いたくないかも。
肌触りが良くて気に入っていたそれが、課長の手にあったかと思うとポケットにも入れたくない。
慌てて頭を下げると、駅の中に飛び込んだ。
「山野さん!!」
『甲斐くん、無事か?!』
繋がりっぱなしの携帯に耳を当てると、山野さんが大きな声で叫んでいた。
「だ、大丈夫。」
『甲斐くん、うちに来い。鍵は持ってるよね?!』
「は、はい。」
どうしよう、震えが止まらない。
『入って、しっかり戸締りしておくんだよ。なるべく早く帰るから!』
「はい。」
気持ち悪い。
胃が痛い。
冷や汗で背中がびっしょりだ。
明日から仕事に行けないかも。
でも、いきなり辞めるなんて怖くて出来ない。
どうしよう、怖い。
寺田さんの話が思い出されて、ムカムカが激しくなった。
『課長、結構、甲斐さん見てるから、そうなのかなって。』
『え、マジですか。』
見てるどころじゃないし!
つけてきてるし!
後ろを振り向く限り、いまはいないけど、どこかで見てるかもしれない。
『いいね、甲斐くん。俺以外、絶対開けちゃダメだよ!』
「はい!」
半分泣きながら、おれは強く頷いた。
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