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「で、ですね。知らない人からお花を頂いたんです。」
遠野内科の松島さんに、先日のお礼のお菓子を届けた。
その時に顔色が良くないと心配されたから、ついつい薔薇の花の話をしてしまった。
「知らない人?」
「そうなんです、不安で。」
松島さんは、顎を揉みながら嘆息した。
「随分、悪趣味だね。」
「はい・・・。しかも意味を調べたら、ゾッとしました。」
そう、赤い薔薇は「あなたを愛している」という意味がある。
そして、更に、その花の本数が1本ということは「あなたしかいない」という意味を持つ。
「ぐったりと萎れていたので、儚いという意味が追加されるんだそうです。」
「へぇ・・・。」
あなたしかいないと思うほどに、あなたを愛しています。
この儚い想いを受け止めてください。
「物凄く執着されている気がするよ。大丈夫かい?」
「はい、一応、男ですし。」
心配かけないように、力こぶを作って見せた。
「甲斐くんは華奢だから。」
「え、そうですか?」
松島さんは、力強く頷いた。
「うちにおいでよ。しばらく、うちから通ったら良い。」
「いえいえ!そんな、大丈夫ですって。」
高校の先輩っていうだけなのに、そんな甘えられないよ。
しかもお客様でもあるんだから。
「知らないよ?怖い事が起きても。」
「怖い事?でも、」
写真に薔薇、GPS。
それ以上に怖いことってあるかな?
「お花を頂いただけですし。」
松島さんには写真とGPSの件は話していない。
冗談にならない部類の話だからだ。
「夜中でも良いから、何かあったら連絡して。すぐに駆けつけるよ。」
「ありがとうございます。」
しっかりと頭を下げた。
「まあ、単に、たまたま落ちていただけかもしれませんし、気にしないことにします。」
そう付け加えると、松島さんは微妙な表情をして笑ってくれた。
「明日は仕事?」
「いえ、お休みです。」
松島さんが立ち上がって机から手帳を持ってきた。
「なら、午後からバッティングセンターに行かないか?」
「バッティングセンター?」
今週の土曜は、山野さんはお仕事だ。
通常勤務って聞いてた。
「そ。ストレスも溜まってるだろ?発散しに行こう?」
魅力的なお誘いだった。
「薔薇を置くような人だ。ひとりにならない方が良い。」
・・・うーん。
「でも松島さんのせっかくのお休みなのに。」
「大丈夫。それにコートが欲しいから、一緒に選んで貰えると助かるんだ。」
コートか。
確かに冬物が売られはじめた。
もしかすると、山野さんへのプレゼントも選べるかも。
今年はふたりで初めて迎えるクリスマスだし。
色々、候補を立て始めてもいいよね?
「おれで良ければ。」
松島さんと明日の待ち合わせを決めて、おれは病院を失礼した。
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