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「どういうつもりで、つけまわすんだ。」
静かな口調が、余計に恐ろしい。
対して松島さんは、床に寝転んだままヘラリと笑った。
「可愛い子だ。自分のものにしたいと思ってなにが悪い。」
「だからGPSを仕込んだのか?」
「GPS?なんのことだ?」
・・・え。
「誤魔化すな、お前が仕込んだんだろう?」
「それは違うな。・・・モテる彼女を持つと苦労するな!」
心底楽しそうに松島さんは笑った。
「写真と花は認めるよ。可愛いものは愛でたいからね。」
・・・嘘。
松島さんが全ての犯人じゃなかったの?
「なあ。」
起き上がった松島さんは、おれを見上げた。
「なんで俺だって気付いたんだ?」
「・・・。」
山野さんが振り返って、カメラの事は言うな。という顔をした。
だから迷って、ひとつだけ答えた。
「おれ、花言葉の話をしたとき、」
そう、バッティングセンターに誘われる前。
「花の種類は言わなかったはずなんです。」
「え?」
花言葉を話した。
だけど、薔薇をもらったなんて言っていない。
「後から考えて、松島さんに薔薇って言ってないのになって。」
「・・・そっか。」
最初、有名な花言葉だからかなって思ったりもしたけど、カメラを覗き込む松島さんを見て、確信に変わった。
「な、甲斐くん。やっぱり俺のモノにならないか。頭の良い子は大好きなんだ。」
松島さんの勝手な言い分に、おれは首を振った。
「いやです。ごめんなさい。」
深々と頭を下げた。
「つきまといも止めてください。」
キッパリと言うと、松島さんは笑い出した。
「気持ちに蓋は出来ない。もしかしたら、俺の方を好きになる可能性もあるだろ?」
熱烈な告白なのに、気持ちが動かない。
迷惑だという気持ちで、胸の中がいっぱいになった。
・・・おれ、冷たいのかも。
「可能性はありません。」
おれは、山野さんのことが大好きなのだから。
松島さんの表情は変わらない。
何を言っても受け入れるつもりは、ないみたいだった。
膠着状態。
それを破ったのは、白衣を着た女性だった。
「話は終わったかしら。足を見せて。」
座り込んだままの松島さんの足をむんずと掴んだ。
「痛ッ!」
「あら、膝が割れているのかしら?」
「ぃたたたたたたた!!!離せ!」
とてもじゃないけど、診察している感じじゃない。
痛みを感じやすいスネや蹴られた部分を力一杯、握りしめて虐めている。
「あら、あなた遠野先生のところの方じゃなくて?」
「!!!」
やっぱり、たかお先生だ。
たかお先生は、ゆっくりと笑顔を作った。
「遠野先生には、大変お世話になっているの。奥様はお元気かしら。」
松島さんの顔色が、白くなっていく。
「奥様主催の展覧会にいつもご招待いただいているの。久しぶりにお会いしたいわ。」
松島さんのスネを握りしめた たかお先生の指も、力一杯握りこんでいるからか、白くなっていた。
「韓流ドラマが大好きな奥様に、卓球の試合の話をしたら、どんな顔をされるかしらね。」
・・・怖い。
たかお先生って、ジワジワ虐めるタイプだ。
「は、離せッ!!」
たかお先生を突き飛ばして、松島さんは逃げだした。
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