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予言のカバンは、甲斐のアパートには無い。
日々の通勤に使用する大切な仕事カバンだ。
山野邸に、ちんまりと置かれていた。
と、いうことは、現状物的証拠として確認することが出来ない。
今出来るのは、
「中島くーーーんッ!!」
魔窟と化したアパートで、本人に確認するしか無かった。
アパートの扉を開けた甲斐は、ぶっ飛んだ。
そこには、力士富永と中島くんがベッドで抱き合っていたからだ。
「!!!」
そして、中山課長はクローゼットの中に頭を突っ込んでいた。
て、寺田さんは?!
ギョッとして部屋を見渡すと、冷蔵庫の前で四つん這いになっている。
ええーーーー?!
いやいや、嘘だよね?!
「甲斐くん!メガネは?!」
入り口で硬直していたおれの後から部屋を覗き込んだ山野さんは、部屋の状況を確認すると、静かにおれを抱き寄せたのだった。
------------※ ※ ※------------
さて、遡ること10分ほど前。
富永は、待てど暮らせど帰ってこない買い物組にイライラしていた。
いや、正確には、甲斐と山野のことは待っていない。
早く帰ってきて欲しいのは、寺田と中山だ。
・・・あのふたり、付き合っているのかいないのかがはっきりしないよな。
微妙な距離があるのだ。
バッティングセンターでは、てっきり付き合っているように見えたが、ここで観察した感じだと、まだ自分にもチャンスが残されているような気がしてならない。
少なくとも、寺田さんは、好きな人を見る目をしていなかった。
と、なれば、頑張ればいけないか?
テーブルに出しっぱなしのビールを口に含んだ。
すでに温くなったそれは、美味くはない。
ないけれど、落ち着くために口に入れた。
分からないのは、甲斐の立ち位置だ。
何故、バッティングセンターに一緒にいたのだろう。
まさか、甲斐も寺田さんのことを狙っている?
有り得なくは、ない。
寺田さんは、可愛い。
真面目で、しっかりもので、毎日美味しそうなお弁当を作って持ってきている。
なんとなく、目で追うようになった。
話しかけると、ドキドキした。
営業から帰ってきたら、おかえりなさいと笑顔で言われて、ああ、お嫁さんになって欲しいと思った。
だから、ケジメをつけるために、彼女と別れた。
寺田さんを好きになっていたから、これ以上の関係は続けられなかったのだ。
恋愛に関して、器用じゃないと思う。
嘘もつけないし、好きという気持ちを押すしか出来ない。
勝算もあるか分からなかったけれど、ケジメをつけた。
ハロウィンパーティーか。
どうせなら、もっと格好良いものを着たかった。
やさがしするのは反則かな・・・。
ちらりと奥のクローゼットを見た。
絶対、まともなTシャツやスエットはあるはずだ。
どうしよう。
でも、ハロウィンパーティーと言われた。
着替えてしまうと、パーティーが成立しないかもしれない。
迷いつつ、立ち上がった。
ちょっと覗くだけなら良いよね?
女性のタンスを開けるわけじゃないんだし。
心の中で言い訳をしながら、富永はクローゼットに手をかけた。
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