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清水さんは、泣きたくなるほどの「現実」で、夢なんじゃないかっていうこの不可思議な状況を簡単に打破してくれた。
「まあ・・・みんな落ち着こうか。」
「おじさん!」
四つん這いの寺田さんの顔が輝いた。
「恭子・・・お前は何をしてるんだ?」
上体を起こした寺田さんが首を傾げた。
「たぶんなんだけど、冷蔵庫でキムチが爆発してるの。」
ええ?!
「待って待って、寺田さん!キムチって?」
「甲斐さん、キムチ入れたでしょ?」
入れない!入れてない!
しかも、冷蔵庫は空っ・・・
「ぽじゃない!」
おれは慌てて靴を脱いで、冷凍庫を開けた。
「・・・あぁっ!」
急速冷凍に耐えられなかったビール缶が歪な形になって、シュウシュウ音を出している。
そして悲しいことに、液体がこぼれ落ち凍りかけたビールが冷凍庫の底で白々と輝いている。
「甲斐くん、君は斬新だね。」
「本当、甲斐さん間違えるにも程があるわ。」
山野さんと寺田さんから呆れた目で見られた。
「や、えっとこれは!」
冷蔵庫のコンセント抜いてたからー!
ビール入れっぱなしで忘れてたおれが悪いんだけどっ。
部屋の中に入った清水さんが、ゆっくりと首を振った。
「・・・俺が言ったのは、その服装なんだけどね。」
あ。
寺田さんに言ったのは、四つん這いよりもそのコスプレの話だったんだ。
「強そうでしょう?」
胸を張った寺田さんに、清水さんは肩を竦めた。
「えっと、中山さん。」
清水さんは、クローゼットの中で正座をした課長に、次に声を掛けた。
「はい!」
「そこで何をされてらっしゃるんですか?」
課長は、ベッドの上で同じく正座をした富永さんと中島くんを指差した。
「彼らふたりを縛る予定で紐を探していました。」
その発言に、ベッドのふたりは目を白黒させた。
「「え?!ふたりを?!」」
清水さんは、床のコショウゾーンを避けながら奥のベッドの前に立った。
「つまり、中山さんはこのふたりがそうだと?」
「可能性の問題です。」
何やら怪しい方向に進んでいく会話に、富永さんも中島くんも顔色が白くなっていく。
・・・清水さん、迫力ありすぎます。
おれ、その顔で睨まれたら、おしっこちびりそうです。
「甲斐さんのベッドの匂いを嗅いでいたふたりは、充分に疑わしいと判断します。」
「「ええっ?!」」
富永さんと中島くんが顔を見合わせた。
「そんなことしてません!」
「課長、誤解です!俺が襲われたんです!!」
「嘘だ、甲斐殿のクローゼットを漁ってたくせにッ!」
ぎゃあぎゃあと弁解するふたりを見下ろしていた清水さんは、ちらりとおれを振り返った。
あ!
「清水さんそのふたりは、」
「甲斐さんのお知り合いですね?」
ぶんぶんと首を縦に振った。
「そうです!それに・・・っ!」
おれは大きく息を吸った。
「それに・・・、ストーカーは勘違いでしたッ!!」
おれは勢いよく頭を振り下ろした。
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