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吹き荒れる嵐の中で、中島くんが震えていた。
抱えた膝が、ガクガクと揺れてしまっている。
「あ、あのね!」
中島くんのフォローをしようとしたおれに、山野さんは張り付けた笑顔のまま、片手をあげて制した。
「中島さん、聞こえなかったかな?」
ああ、おれも怖い・・・っ!
部屋の温度が、氷点下まで下がった気がした。
ちょうど山野さんと中島くんとの間に立っていた富永さんは、窓辺へと音を立てずに、ゆっくりと後退りしている。
嵐に巻き込まれないようにする、人間の危険回避能力が前面に出ていた。
「ひっ!!」
頭を抱えた中島くんを見て、清水さんが無言で眉を上げた。
「GPSを仕込んで、何を企んだ?」
「たたたたた企みなんて!甲斐殿を守りたい一心で!!」
「だから行動を監視したというわけか?」
黙ってふたりの会話を聞いていた清水さんは、おれの顔を怪訝そうに見つめた。
「・・・甲斐さんは、先程、ストーカーは勘違いだったと言われました。GPSを仕込んだ上で監視をするのは、甲斐さんも承知の上だったということですか?」
違う!
そうじゃなくて!
「中島くんは、単にサバゲーでおれを守りたかっただけみたいなんです!」
中島くんは、首がもげそうな勢いで頷いた。
「そそそ、そうでしゅ!はぐれても、合流できりゅので!」
中島くんは、噛んだ舌先を人差し指と親指で摘んだ。
「だからって本人の承諾もなくGPSで監視をするなんて、随分ふざけたことをするものですね。」
山野さんのゆっくりとした口調が怖い。
張り付けた笑顔に、笑っていない目。
抑揚の失われた物言いは、不気味でしかなかった。
「おいたをする子どもには、何をくれてやりましょうか。」
ヒィィッ!
中島くんの隣にいたはずの課長は、寺田さんの横に避難していた。
中島くんは、舌を摘んだまま硬直している。
富永さんは、こちらには背を向けて、窓の外を眺めていた。
「山野さん、勝手に罰するのは越権ですよ。」
荒れ狂う猛吹雪を物とせず、堂々と中島くんの前に立った清水さんは、山野さんに笑顔を向けた。
「まあ、気持ちは分かりますが。」
清水さんは、おれに視線を向けた。
「誰だって大切な人を傷付けようとする者には、敵意を向けるものですからね。」
・・・あ、清水さんには分かるんだ。
おれたち、付き合ってるって。
「改めて中島さんの話を伺いたいので、山野さんはお口をチャックでお願い致します。」
ほんの少し、吹雪が止んだ。
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