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雪曇り
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★
俺には親しい友達が二人いる。
名前はそれぞれシヅと氷翠(ひすい)という。
何をするにも大体一緒。三人でつるむ日々は至って普通で、高校生活は実に平凡で平和に過ぎている。
シヅと氷翠は、付き合っている。
俺もシヅも氷翠も当然全員男で、一応外野に他言無用にしている秘密事項ではあるけどギスギスなんてしていない。
それに漫画やドラマなどで三人組のうち二人が交際すると余った一人の奴は肩身が狭くなったり蚊帳の外になるイメージがあったが現実は案外そんなこともなく。
毎日お喋りするし、普通に遊びなんかも誘ってくれる。裏も何もない、ずっと変わらない友達関係のままだった。
俺たちの仲は非常に良好と言えるだろう。
「椿(つばき)。嗣月(しづき)が夕飯一緒に食べようって」
「あっごめん、俺後で食う。物理の課題やっちゃいたい」
「んー。じゃ先行くな」
俺たちは寮生だ。学校が終われば基本的に寮へ帰り、放課後から夜、そして朝まで……生活のほとんどをそこで過ごしている。
親とのトラブルが日常的に身近で起きないのも平和の一因でもあるかもしれない。
一般的な生徒は二人部屋が割り当てられる。
12畳程の部屋の真ん中をカーテンが半分に仕切って、それぞれの壁側に学習机やベッドが配置されている。
プライベートに配慮はされているものの落ち着くかといえばまあ、嘘にはなるだろう。
しかし俺のルームメイトは氷翠だ。偶然の割り当てではあったが他の人に比べて気は使わない。お陰で寮生活は俺にとってかなり過ごしやすいものだった。
「椿。がーんば」
不意に出て行ったはずの氷翠の声が聞こえて、玄関のほうを見ると靴箱の上にさっきまで無かった缶コーヒーが置かれていた。
俺の好きなメーカー。俺の好きな微糖のやつ。当の氷翠の姿はもういなくて慌てて走ってドアを開けたら廊下の突き当りに背中だけが見えた。
「あ、ありがとっ…!」
氷翠はひらりと手を振ると角を曲がりそのまま見えなくなった。自販機は一階にあるからわざわざ行って戻ってきたことになる。
こうして些細なことに気を回してくれるところ。いいよなあ。氷翠ってよく気が付く。気遣いや嬉しいことを先回りかつさりげなく行い、また見返りは求めない。
俺は当然氷翠が好きだった。
だから二人から付き合い始めたと報告されたとき、「あ。取られた」って感情が生まれたのは必然だった。
そして俺は悩み、結果、どちらも手に入れることを選んだのだ。
*
「椿」
消灯の後ベッドの中でなんとはなしにスマホをいじっていたら俺を呼ぶ声が聞こえた。
カーテンの向こう、声の主はもちろん氷翠だ。
「ん」
「……。起きてるだろ」
「うん」
返事は無い。要領を得ない、彼らしくない会話だった。
そもそも氷翠が俺を呼ぶときは大抵同時に要件を言う。
今はそれが無い。つまり。
俺はベッドから降り机の引き出しを開けそこに入っているボトルと四角い袋を一つ取り上げた。どちらも手に収まるほど小さいそれをスウェットのポケットにしまってから、カーテンの切れ目にすっと指を差し入れ向こうを伺う。
氷翠はベッドの上で横たわらずにあぐらをかいて座っていた。
ああやっぱり、合図か。
俺は声量を抑えて「氷翠」と呼びかけた。
こっちに気付いた氷翠は無言でベッドサイドのランプを点ける。淡く仄暗いオレンジ色が彼の輪郭を照らした。無機質な寮室に似合わないお洒落なこれは、いつだか持ち込まれた氷翠の私物だ。
「どしたの」
俺が後ろ手にカーテンを閉める音、氷翠のベッドに腰かけてスプリングが軋む音、二人分の衣擦れの音。
静かな部屋に響くそれが氷翠は気になるようできょろきょろと頭を揺らす。あまりにも普段と違い気を張ってるのがわかりやすくて逆に助かるなあ。
「……。えっと……」
「わかってる。シヅでしょ」
氷翠は浅くうつむき首を縦に振る。
表情は伺えない。頭を持ち上げてキスしたくなる衝動をぐっと堪えて、俺は氷翠と同じようにあぐらをかいた。
「……。その。……く、くち、で……」
「フェラ?」
「なっ〜…!バカ!」
「いてー!あははっ!」
ばっと顔をあげたかと思えば氷翠はそのままぽこぽこと枕で殴ってきた。照れて直接的な言葉を避ける氷翠にあえてそのままぶつけて茶化すのは、楽しい。
俺がからから笑ってると調子に流されたのか緊張が抜けた氷翠はふーっと大きく息を吐き出した。
「何。シヅがくわえろって?」
「ちげーけど。……嗣月はいつもするし。だから……、よ、喜びそうっつーか」
「はいはい惚気乙。大丈夫?キツいよ〜」
「吐く…?」
「あははっ、そこまではならないと思うけど」
顔を少し近付けたらまた氷翠が身を強張らせたのがわかった。
じゃあまあ、とりあえず。別に俺も急には勃たないし。いきなりぶちこむなんて酷いことはしない。
「氷翠。あーん」
「へ?う、ん、ッ?」
素直に開かれた氷翠の口に俺は無遠慮に人差し指と中指を入れた。
氷翠は目を丸くしてるが吐き出したりはしない。こんなの突然されても無防備に受け入れてくれることに少し胸が鳴る。
「?…ふぁに、ひへるの」
「あのねぇ氷翠。口も、舌も、性感帯になれるよ」
「っ…!」
「氷翠の気持ちいいとこどこかな」
それまで怪訝そうにしていただけの氷翠が俺の発言で途端に意識を変えたのが見て取れた。うんうん、言葉って大切だよね。
氷翠は手元のシーツをぎゅっと握りしめる。
俺は指先で舌を軽く撫でてから奥歯からの歯列をゆっくりなぞった。氷翠、歯並びいいな。
「どういう動きがいいか、覚えて」
「ッ、ぅ」
歯茎と頬を内側から撫でて上顎をくすぐると氷翠の肩が震える。
えずかない程度に奥まで突っ込んで、舌の付け根をほぐすように、丹念に丁寧に刺激してやる。そのまま舌の裏まで滑らせると熱い吐息が触れた。
「ん…、ん…。ぁふっ」
舌を指で挟んで揉んだり、軽く引っ張ったりしてみたり。呼吸が指先から伝わってきてなぁんかやらしい声が出てるけど無意識なんだろうか。
ぬるりとした表面を撫でつけると鼻に抜けたような甘やかな吐息を漏らした。
ナカをかき回すときみたいな行為に氷翠はすぐ夢中になった。あったかくて柔らかくて、ああ、ある意味体内かな。
握りしめてたシーツの皺はゆるくなって肩の力もすっかり抜けている。氷翠は快感を拾うのが上手だ。
幾分も経っていないのに、もう俺の指を自ら追いかけて絡ませている。まるでディープキスをしているみたいだ。
唾液を溢れさせてうっとりと目元を綻ばせた氷翠。その扇情的な表情は、結構効く。
相手をしながら片手間に自身を勃たせるまで時間はそう掛からなかった。
「どう?」
「ん……、っ。あ」
指を引き抜いたときの、氷翠のその目が最高に良かった。
物欲しそうな、欲に濡れた瞳。
普段の氷翠からは想像も出来ない甘い顔。「まあまあ」なんて見え透いた嘘を吐くところまで愛おしい。
「じゃあ本番ね」
「ゔ」
俺は壁に背を預け、下着ごとスウェットをずり下げた。軽く扱いて半勃ちさせたちんこを見せたら氷翠はさすがにビビったけれどすぐ大人しく顔を寄せてくる。
愛されてるなあ、シヅ。
一瞬ためらいを見せたものの、結局氷翠は勢いよく一気に口に含んだ。
様子見で手遊びしたり舐めたりしてもいいのにね。こういう潔いっていうか思い切りがいいとこ好きだなあ。
「さっきの思い出して。氷翠のいいところに当てて、こすって」
俺のモノに氷翠の舌が生き物のように絡みついた。
あたたかい内壁に触れながら荒い吐息に包まれ、弱い快感が与えられる。吸い付きも甘いし正直物足りない。勃起してきたモノを奥まで入れられず上寄りを舐めたりぬるつかせてくるだけ。
でも氷翠が苦しそうな顔をしていないのでこれでいい。
「……ふ、」
……シヅが相手なら。
無茶して喉奥まで入れちゃってむせたりしそうだな。
口に含む前に、なんならここへも愛おしそうにキスしたりするのかもしれない。
しかしそれを仕込むのは俺ではない。二人がやってるうち自然とそういうことをするようになればいい。
「椿、きもちい…?」
「ふふ、うん。きもちいよ。ねえ氷翠。今度は舐めなくていいから、ゆっくり出し入れしてみて。口で、扱く感じ」
「…ん。こう…?んん……っ」
「っ、あ。…、いいね。じょうず」
氷翠は言われた通りに動き、さっきよりかなり強い刺激が俺に訪れる。薄い唇が早くないペースでカリを走るのが重たく痺れるようでやけに気持ちいい。
反射的に漏れ出る俺の反応に、氷翠は心なし満足そうだった。
ぐっとくるものを感じて髪をつい撫でてしまったのは許してほしい。
フェラって感じ。と頭悪い感想が浮かぶ。
ふと氷翠の足元の方に視線をやると、彼は膝を合わせてもじもじと身動ぎしていた。あれが何を意味するかは理解に容易い。
へえ。一生懸命に頬張って、くわえてるだけで気持ちよくなっちゃうんだ。えろいなあ。いいなあ、シヅ。
「フェラで感じちゃった?めっちゃかわいい」
氷翠の揺れる腰のラインをなぞると大げさなくらい肢体が跳ねた。
痴漢みたく尻を揉んでから、スウェットの上から割れ目に滑らせ、その奥をぐりぐり押し込んでみた。
「こっちもう慣れた?」
「ふ、うぁ、わかんな、…んっ!」
「そっか。練習する?」
氷翠は、こくこくと首を縦に振った。俺はポケットに忍ばせていたボトルのローションを指に纏わせた。スウェットの腰から手を差し入れて、脱がさないまま、そこへ触れる。
手探りながら、閉じている秘部を指の腹で拡げるように動かすときゅっと吸い付いてきた。ここから先で生み出す快楽を知ってる動き。男を知ってる氷翠。
……たまらない。
「あ、んうっ、」
「お口がお留守ですよー。氷翠」
「う、んッ…!〜ッ!」
そのまま氷翠のナカへと指を押し込んでいく。俺の知らないうちに飲み込むのが上手くなった。
指を曲げ、氷翠のイイところをピンポイントで潰すともうフェラどころじゃない。
抜き差しなんかやってやるともうダメそうだった。
「はッ。ひ、ゃ!…ん、あ…!」
くわえきれず、かといって離せず、おれのちんこに縋るようになってる氷翠がかわいい。つーかその位置で喘がれると視覚的になかなか良い。
俺は機嫌良くきゅうきゅうと吸い付くナカを堪能していた。
「あっ、つば、き。…も、挿れてっ、!」
氷翠が欲しがるまで時間は掛らなかった。
一番気持ちいいことを知ってるんだから当然でもある。「いいよ」と囁き指を抜く。
手早くゴムを付けると待ちきれなかったらしい氷翠が自ら乗っかってきた。受け身になりすぎないところ、かっこいいな。なんて。
「あっ…!はい、ぅ…ッ」
「…ん、ゆっくりでいいよ」
氷翠は重力に従ってゆっくり降ってくる。
熱く狭いナカへと俺のモノはずるずると呑み込まれてゆく。強く突き上げたい衝動をぐっと堪えて、待った。
氷翠にはまだ早い。性欲をぶつける行為じゃ意味がない。
なんとか全部を収めた氷翠は、ゆるゆると身体を動かし出す。俺は腰の辺りを手で支えるだけに留まり、氷翠のやりたいようにさせた。
「ン、っあ。あ、きもちっ、い」
「うん。ナカでよくなるの、うまくなったね」
「あ、んんッ…!」
初めの頃は苦しそうに唸ってたのが今じゃ随分と甘い声を出すようになった。
シヅと上手いこといっているんだろう。
俺は汚れないように氷翠のスウェットをまくり上げた。顎まで上げたのはもちろん下心だ。
舌はハメたまま、現れた乳首を優しく摘まみ上げる。
「ッおい。やだ、それ、っ…」
「んーそう。でもこっちも身体で覚えよーか」
「ひ、ゃっ!」
あんまり触られてなさそうな氷翠の胸は乳首も小ぶりだ。反応を見る限りどうやらあまり触られてないらしい。
シヅが喜ぶよ、と、ひとりごとみたいに呟く。
結構小声のつもりが氷翠は聞き逃さなかったみたいで、ナカがきゅんっと締まった。
無意識だろう、ついっと股間へ伸びた氷翠の手を俺は空中で絡め取る。
「こら、いじっちゃだめ」
「~な…っ!あう、つらいい~っ……」
「大丈夫。こっちでも気持ちよくなれるよ」
遅く、遅くを意識して。氷翠に連動するよう徐々に俺からも奥を穿つ。シヅとは違うやり方で物足りなさを感じさせてあげる。
氷翠はシヅの恋人だから、俺が仕草を寄せて混乱させてはいけない。
それで氷翠が足りなくて、自ら腰を振るならそれはそれでいい。
「んんっ、ひ、あっ〜…!」
「っ、は……」
「あう、しづき、しづ、きぃぃ…」
氷翠は逃げたいのか背を反らして膝を立てようとする。それ締まってびりびりクるからやめてくれないかなあ……。
俺の方も、もうお喋り出来る余裕がなくなってきた。
奥歯を強く噛んでゆるいペースで突き上げ続けた。目の前の肌を噛みたい衝動をぐっと堪えて、舐めつけて我慢。あー。すっげー気持ちいい。
「あ、あ~っ、…!はっ、あ、ん!」
「ふ……ッ」
まだナカイキが出来ない氷翠のために人差し指と親指で輪を作り、氷翠のちんこに通した。
やっと来たであろう直接的な刺激で、溜まった欲を吐き出そうと夢中で腰を振り出す。目を閉じて、気持ち良さそうに快楽で踊る氷翠に俺の胸はいっぱいになっていく。
「やッ、あっ!いく、いくっ」
「……うん、いいよ」
「あ゙っぅ、嗣月!しづきぃっ…!~~っあ!…うあ!?」
恋人の名前を何度も呼んで、氷翠が達する。
吐精しながら、ナカはぐねぐねと俺を搾り取る。ぐったりとしなだれかかってきた身体はそのまま後ろに押し倒した。
イッてる氷翠には悪いけど、俺だって出したい。
最後の最後だけは、俺のものだ。
腰を掴んで、そっからは俺のペースで腰を振った。焦れてた分高まるのも早い。こんなセックスしてたら早漏になりそー。
「ッ!?あ゛、あ、ひあ、ッ、〜やっ!椿ッ、あっ」
「…、ふっ、」
「う、あぅッ…!」
「ッ~~…!、ぁ…っ!」
がつがつとぶつけててっぺんを追い求めて、直前で一気に引き抜く。
ゴムを引き捨て、ちんこを扱いて氷翠の腹の上に思いっきりぶちまけた。全身を突き抜けるような瞬発的な快感と解放感に、力が抜けて頭が重くなった。
目を開けると先に出てた氷翠のと混ざってなんともいえずエロい光景。
「はっ…、ぁ……」
「うわ…。かけやがっ、たな」
「…ははっ。いいでしょお互い様。ナマナカはシヅにしてもらいな」
「〜〜っ!下品!」
賢者タイムに浸る間もなく枕をぶつけられ、事後に似合わないコミカルな空気にくつくつと笑いがこみ上げた。
ティッシュであらかた拭って服を着直す。
氷翠は隣で横たわって、こっちをぼうっと見つめていた。何か言いたげだったので「なぁに」と声を投げた。
「椿。俺、セックス上手くなったかな」
「うん?下手ではないと思うよ」
「やなやつ」
「あはは」
「……椿、こっちこい」
氷翠が手招きをしている。「もっと」と言うので内緒話かと顔を近付けたら視界が暗くなった。続いて、唇に柔らかい感触。それは瞬く間に離れて気付けば目の前に氷翠の顔面。
キスされた、と何秒か遅れて事態を飲み込む。
「これ浮気かな」
「……どうかな。氷翠がそう思えば、そうなんじゃない」
「じゃあ違う」
「うん。じゃ違うよ」
俺たちの関係に俺の意思は必要ない。
だから、なんでキスしたのかとは聞かない。
彼らが俺を必要とするときには、なんでも受け入れる。罪悪感なく都合よく求められる存在でありたい。
「俺、椿のこと信頼してる」
「…うん」
俺が自分のベッドに戻る時、顔も見えない氷翠がそんなことを言った。
返事をしながら、俺は静かに笑ってしまった。
カーテンの向こうからは「おやすみ」と小さな声が聞こえた。
「うん。おやすみ」
氷翠。大好きな人で、大好きな人が、大好きな人。
やっぱり俺は、お前を手放さない。お前も、俺を手放せないね。
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