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変化
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今日はいつものお世話係が僕の後処理をするわけでもなく、そもそも後処理をしないでもなく、まさかの鷹様自らシャワー室へと連れていってくれた
突然どうしたのだろう
最近、なんだか変だ
「なあ、美郷・・・。」
『・・・はい?』
こんな優しい声で話してくれるなんていったいどんな心境の変化だろう
少し心配になるくらいには鷹様は穏やかだった
「俺は、罪人だと思うか?」
『・・・・・・?』
突然の質問に真意を測りきれなくて僕は首を傾げる
ほんとにどうしたんだろう
こんなに自信なさげに問いかけてくるなんて
ここは、本当に思ってることを話した方がいいんだろうか
それとも、お世辞を言って鷹様を安心させたほうがいいんだろうか
『・・・いえ、あなたは恐らく罪人ではございません。ただ少し僕が傷ついているだけです。』
「・・・・・・。」
僕は少し迷った末、後者を選んだ
とても驚いた顔になる鷹様
驚いているのはこっちだよ
あなたのそんな感情豊かなところ、見たことがないのに
なに、今さら・・・
「・・・そうか、ありがとうな。」
『いえ、滅相もございません。』
流石に驚きを隠せなかった
声が少しうわずる
まさか鷹様に礼を言われるなんて・・・
そんなの思ってもいなかった
もしかしたら
僕の心に少し希望の光が灯る
もしかしたら、この最低な生活に終わりが来るかもしれない
それはとても小さな希望の筈だった
だけど、それは僕の心の中でいつまでも光を発していた
朝、無理矢理起こされずに済んだのなんて、初めてじゃないだろうか
それでもいつもの癖で早くはおきるんだけど、こんなに安心できる朝は想像した事がなかったし、出来なかった
普通に毎日のごとく痛む両足を引きずって鷹様の部屋へと向かう
なんとなく、呼ばれているような気がしたんだ
コンコン
折角落ち着いている怒りを逆撫でしないように控えめにノック音を響かせる
返事は無かったから、無礼かなとは思いつつもドアを開けた
『失礼いたします』
「おう」
扉を開けば、目を真っ赤に腫らした我が主、鷹様がいた
それは今まで見たことも無いくらい弱った表情
「・・・ちょうど、呼ぼうと思っていたんだ。でも、もう少し寝てても良かったんだぞ?」
『いえ、十分でございます。』
「そうか・・・。」
貴方のせいで起きる習慣が付いてしまいました、怖くて寝ていられません
なんて口が裂けても言えないからとにかく礼儀正しく微笑む
呼ぼうと思ってたってことは、予感的中ってとこかな
『それで、ご要件は・・・?』
「ああ・・・。」
鷹様がゆっくりとこちらに近づいてくる
僕は思わず身構えた
体が勝手に震え始めるのは仕方ないと思う
いたいの、やだなぁ
だけど、次に聞こえてきた音は僕を叩く音ではなく、
ガチャ
『・・・・・・!?』
僕の鎖が解けた音だった
『鷹・・・様・・・??』
鷹様は泣きそうな顔で僕を見ている
今までなかった足のすぅすぅする感覚に違和感を覚えて、僕は思わずしゃがんで足首を触った
と、鷹様が僕の手の上に鷹様の手を重ねた
僕は思わず体を強ばらせてしてしまう
「・・・今まで、ごめんな。・・・お前をこんなにしてしまったのは、全て俺の責任だ・・・。」
『・・・・・・!?』
もう、なにがなんだか分からなかった
いきなり、どうしたの?
突然体が浮く
しばらくして、鷹様に抱っこされているのだと気がついた
「こんなに軽い体で・・・。俺は、今までなにをしてきたんだろうな・・・?」
『・・・・・・。』
僕はなにが起こっているのか分かんなくて、ただただ静かに鷹様の声を聴いていた
「・・・俺は、お前を傷つけてなにがしたかったんだろうな・・・?ごめんな、ごめんな・・・っ。」
鷹様の手が震えている
さっき、僕のこと軽いって言ってたし、重くて震えてるわけじゃ・・・ないよね?
じゃあ・・・もしかして、泣いてるの?
僕の背にまわされる手に力がこもり、まだ僕の回復力でも治っていない傷がヅクヅクと痛む
だけど、これは・・・
初めて僕が感じた愛情だった
どんな形であれ
確かに愛情だったのだ
僕は一日中なにをされるわけでもなく、ただ鷹様の部屋のベッドに座っていた
普通ならこんなことありえない
そもそも、この部屋に来ること自体イレギュラーだ
時折こちらを向いては慈しむような目を向け、ごめん、ごめんと謝られた
確かに、今まで苦しかった
言葉にできないような暗い、辛い体験ばかりをされた
それでも、今僕に向けられているのはまぎれもない愛で、僕はもうどうしたら良いのかわからない
ふと鷹様の方をみれば、すぐに気づいて、
「痛いのか?苦しいのか??」
と、心配そうに訊いてくる
これは、夢ではないのかと思ってしまうほどにおかしな状況に、僕はゆるゆると首を振る
よく見れば、また鷹様は涙を流していた
夜、僕は鷹様に抱きしめられて寝た
温かい、そう感じた
気づけば、僕も涙を流していた
いつも涙は流していたけど、今のは生理的な涙ではなく、温かい感情に締め付けられた心が勝手に流した涙だったんだと思う
それに気づいた鷹様が優しく涙を拭ってくれる
その行為がまるで僕のお父さんみたいに見えて、余計に涙が溢れた
辛くはないけど、辛かった
よく、分からない感情が僕を支配すれば、眠気は飛んでいって・・・
僕はいつの間にか寝てしまっている鷹様の顔をじっと飽きるまで見つめていた
もしかしたら、僕は、赦されたのだろうか?
そう、感じずにはいられなかった
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