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告白
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「みさと・・・。俺、お前が無事・・・ではないけど、生きていてくれて、ほんとに嬉しい。あ、いや、俺が酷いところに送り出したくせに何言ってんだ、って話なんだけど、その・・・。」
これだけ伝えるだけで心臓がバクバクして、自分の頬が紅潮していくのがわかる
言葉が上手く紡げなくてもどかしい
世の中のリア充達はこの試練を乗り越えた上でリア充になっているのか・・・と考えると尊敬の念が湧いてくる
『鷹さん・・・。大丈夫です。僕は本当に鷹さんが助けに来てくれただけで救われた思いがしたんです。』
「美郷・・・。」
優しく微笑んでくれる美郷になんだか緊張が解けていくような気がした
俺は大きく息を吸う
「美郷。俺は、お前に言わなければならないことがある。」
『はい、なんなりと。』
一瞬美郷の顔が強ばるが、直ぐにそれを隠すように穏やかに微笑む
きっとまた俺に酷いことされると思ってるんだろうな
俺はそんな美郷をまっすぐ見つめる
「美郷。」
『・・・はい。』
「俺は、あなたのことが、好きです。」
言った、言ってしまった
言う前よりも返事を聞くまでのこの間がとんでもなく怖い
心臓の音がバクバクと脳まで響いてうるさい
こんな緊張、知らない
俺は怖くて美郷の顔を見ることができなかった
一瞬にも永遠にも感じられる沈黙のあと、美郷が静かに口を開いた
『鷹さん。』
「・・・はい。」
返事をする声が震える
美郷の口調から彼も緊張していることが伝わってくる
こんな俺がこんなおこがましいことを口走ってはいけないのは充分分かっているが、それでもこの好きの気持ちを抑えておくことはできなかった
『ぼくも。』
「・・・!」
『ぼくも、鷹さんのことが、好きです。』
びっくりして俺は美郷の顔を見ると、困ったように微笑み顔を赤らめて俺を見つめる美郷と目が合った
お互いに友達や家族の好きとは違う、あの恋人同士の好きを言っていることが一目で分かった
全くすれ違わず想いがぶつかっていた
「・・・美郷、ありがとう・・・!」
心からお礼を言った
沢山酷いことしたのに、そんな俺を好きになってくれるなんて、そんな幸せなことがあるだろうか、というくらい嬉しい事だった
『こちらこそ、です。』
美郷が照れくさそうに笑う
「改めて、これからよろしく、な?」
俺も照れて手をさし伸ばすと、美郷の細くて骨ばった手が俺の手を取る
その手を引いて優しく美郷を抱きしめた
美郷の暖かさが伝わってきて、とても幸せだった
しばらくして美郷を抱きしめていた腕を解くと、突然美郷は俺の頬に触れた
『ここ、どうしたんですか。』
今まであまりきいたことのない、美郷の怒ったような声だった
美郷がふれたそこには一筋の切り傷があった
矢野のナイフが掠ったようで、一応美郷を病院へ運び込んだ際に手当てはしてもらってある
「矢野のナイフが掠ったんだよ。」
俺がなんでもない、というように軽く笑いながら言うと、美郷はまだ幼さの残る顔で俺を睨みつけた
『やっぱり・・・。僕を助けるために貴方が怪我をしてどうするんですか・・・!』
「大した傷じゃない。」
『それでもです!僕は勝手に治るから大丈夫なんです・・・。でも、貴方は違うではないですか!普通の人間なんですから・・・。』
美郷が俺に縋り付きながら必死に話す
「美郷」
『だから、絶対僕のためなんかに、怪我しないで下さい・・・。』
「美郷・・・!」
だけど、その心配は嬉しくもなんともなかった
だって、美郷が美郷自身のことを全く大切に思っていない、むしろ蔑ろにしているから
そう育てたのは前の親でもあり、今までの俺でもある
だから、俺がその考えを正さなくてはならないと思った
俺が強く名前を呼んだからか、美郷は体を強ばらせて怯えたように俺を見た
『ごめんなさい、出過ぎたことを言って・・・。』
「ちがう、そうじゃない。」
完全に怯えきった美郷をなだめる為に背中をさすって緊張を解く
「そうじゃなくて、俺が言いたいのは、もっとお前自身を大事にして欲しいって事だ。」
『大事に・・・?』
美郷が不思議そうに顔をあげ、俺を見つめる
「お前だって人間だし、大切な1人だ。だから、決してお前が怪我していいなんてことは無いんだよ。」
美郷は理解できない、というように顔をしかめる
そりゃそうだ、だって、体に教えこんだのは俺なんだから
「お前に酷いことしておいて、今更なんだよ、って話だとは思うが、お前だって命を持ってる。皆と平等にな。」
こくん、と美郷が頷く
「今理解しろ、っていっても難しいとは思う。だから、」
俺はもう一度美郷を抱きしめる
「これから、ゆっくり、時間をかけて教えるよ。今までの分も責任を持って。」
美郷の体の緊張がほぐれていく
『まだ、あまり理解できませんが、これからも鷹さんが傍に居てくれる、ってことですよね。』
「もちろんだ。」
『だったら、とても嬉しいです。』
そういって微笑んだ
全く、俺はなんて可愛いやつを好きになってしまったんだろう、なんて凄く幸せな気持ちになった
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