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自傷 3
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手首を傷つけ、気を失うように眠る日々が続く
そうすればきちんと夜寝て、朝起きれることにも気づいたんだ
床が汚れないように適当に置いてある紙を重ねて置けば誰にも迷惑を掛けない
助けて欲しいという気持ちと見つかって呆れられたくないという気持ちが入り交じって中途半端な行動しかできなくて、それがまた僕を僕が嫌いって気持ちで埋めていく
使い古した血にまみれた紙がついに耐えられなくなったのか破れた
だけど、僕はそれに気づかずに今日も手首を切りつける
『・・・ぅ、ぁ』
何度やっても慣れない痛みに呻きながら切りつければやっぱり血が流れる
(あぁ、生きてるんだな、僕)
毎回そんな事を思いながら意識を飛ばす
今日も今日とて視界が白くなっていく
・・・
夢を、見た
多分幸せな夢
僕の頭の上にはあの大きくてゴツゴツした手があって、温かくて、涙を流す夢
ずっと望んでいた温もりにたどり着けて僕は笑うんだ
だけど、夢だって分かっていたから、覚めたくなくて縋るようにその手を握った
『離さ、ないで』
夢の中の僕は弱々しくそう呟く
「・・・離さないよ」
夢の中の平良さんは驚いたように息を呑んだ後、ゆっくりとそう告げてくれた
それがまた嬉しくて涙が溢れる
だけど、なんでだろう
平良さんの顔に霧がかかって表情が見えない
それだけが不安だった
本当はとっても冷たい顔をしてるんじゃないか、って・・・
『・・・っ』
不安でいっぱいになって目を開けた
目の前に広がる見慣れた天井
あぁ、目覚めてしまったんだな、という落胆と、
頭に伝わる温かい温度
「美郷さん・・・?ごめんなさい、起こしちゃいましたね。でも、よかった、目覚めて・・・。」
ずっと聴きたかった声が隣から降ってきて頭だけ動かして横を向けば、ずっと望んでいて、だけど気まずい人
『平良・・・さん?』
僕が名前を呼べば、平良さんは慌てて手を退ける
「ごめんなさい、勝手に触れてしまって・・・嫌でしたよね・・・。」
『・・・・・・?』
見当違いなことを言われて僕は戸惑った
そんなことない、もっと、触れて欲しい
そう言おうと思って、口を閉じた
もしかしたら、平良さんが僕に触れたくないのかもしれない、そう思ったから
だから僕はゆっくり首を振るだけにした
昔よりも随分臆病になってしまった僕は、自分の言葉を発することに恐怖を覚えるようになっていた
無駄なことをして怒られたくない、失望されたくない
機械のように、望まれたことだけしていればいいんだ、と思うようになっていた
だから、言葉は発せずに首だけで平良さんの言葉を否定した
触れて欲しい、という願いを込めて見つめれば、平良さんは困ったように笑った
「触れても、いいのですか?」
僕は頷く
その瞬間、もう一度平良さんの手のひらが僕の頭に乗せられ、柔らかく撫でられる
「いいんですか?あんな・・・無理矢理キスのようなことをさせられて、気持ち悪くないんですか・・・?」
『え・・・?』
平良さんがそんなことを気にしているなんて思わなくて、思わず素っ頓狂な声を出してしまった
『全然、そんな、気にしてなかったです・・・。』
僕がそう言えば、平良さんは驚いて目を見開いた
「そうだったんですか・・・?てっきり、嫌われたかと・・・。」
それは僕のセリフなんだけどな、と思いつつも首を振った
『僕は、嫌ったりなんか、しないです』
この言葉が今の自分が伝えることのできる精一杯だった
だけど、伝わったのか、平良さんは嬉しそうに顔を綻ばせた
「よかったです。嬉しい。」
その笑顔が僕には眩しすぎて、思わず目を閉じた
目を閉じれば瞼に優しいキスが降ってきて、驚いて目を開けた
「嫌、でしたか?」
いたずらっ子のように、だけど少し不安の混ざった目で問いかけられ、僕は思いっきり首を振った
「そう、よかったです」
そういってまた嬉しそうに平良さんが笑うから、僕も釣られて笑った
久しぶりにちゃんと笑った気がして、少し温かい気持ちになった
嫌な気持ちが少しだけ和らいだ気がした
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