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真実
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平良さんの口から零れた言葉に、有り得ないほどの深みと重みを感じで思わず平良さんを凝視した
僕の視線に気づいたのか、平良さんは静かに口を開いた
「俺の姉さんね、死んだんだ。」
『・・・ぇ・・・。』
余りにも静かに言うものだから反応が遅れてしまう
黙って聴いていてね、とでも言うように手のひらを僕に向け、平良さんはゆっくりと目を閉じた
「苦しむ姉さんの顔を、俺は、一生忘れない。しばらく苦しんで、痛みに耐えて、耐えた結果、死んだんだよ。」
平良さんの睫毛が微かに震える
「俺は、今でも、許せないでいるんだ。」
"誰を"とは平良さんは言わないまま続けた
「姉さんを、助けられなかった。」
「最期まで、手を握っていたんだ。」
「俺が手を握っている中で、姉さんは静かに、息を引き取った。」
そこで平良さんの目が開かれ、僕を真っ直ぐ見た
「だから、怖かったんだよ、美郷。また、大切な人が自分の手の中で消えてしまうんじゃないか、って。」
そして、両手でぼくの頬をゆっくり撫で、平良さんは泣きそうな顔で微笑んだ
「生きててくれて、ありがとう。」
『・・・・・・っ!』
思わず僕の頬に涙が伝って、それを平良さんは笑いながら指で掬ってくれる
「どうして美郷が泣くのさ」
『だって、・・・っ!』
心の中がいっぱいいっぱいで、上手く言葉が出てこない
だけど、平良さんはちゃんと僕の言葉を待ってくれた
『平良さん、が、辛そう、だったから・・・っ』
「・・・!」
平良さんは心底驚いた、という表情で僕を見つめる
『きっと、平良さんにとって、平良さんのお姉さんはとっても、大切な存在で、そんな人が亡くなったら、僕だったら、耐えられない・・・』
「・・・・・・うん、そうだね。俺も耐えられなかったよ。」
『それでも、平良さんは乗り越えて、今、とても立派に生きてて、それが、凄く、感動?して、』
「・・・。」
困ったように微笑みながら平良さんは僕を見つめて僕の話を聴いている
『それから、平良さんを、そんな不安にさせてたっておもったら、すごく申し訳なくて』
「良いよ、大丈夫。」
『でも・・・っ!!』
『それ以上に、僕が生きてることを喜んでくれることが、嬉しくって・・・・・・。』
僕がそこまで言い切ると、平良さんは大きく目を見開いて、そのまま涙を零した
今度は僕が困惑する番だった
『ど、どうして泣いてるんですか・・・!?』
平良さんの真似をして涙を掬うけど、逆効果のようでどんどん平良さんの頬には涙が伝っていく
『ぇ、え、』
僕が困惑していると、突然平良さんに抱き寄せられた
『わ、ぷ』
強く強く抱きしめられて、正直息は苦しかったけど、"愛されてる"って感じがしてとっても嬉しかったし、温かかった
しばらくそのままでいたけど、ゆっくり身体を離されて平良さんの顔を見れば目も鼻も真っ赤で、思わず笑ってしまう
そうすれば平良さんも何か吹っ切れたのか、軽い笑い声を響かせた
僕たちは額を合わせてしばらく笑いあった
とても、幸せに感じる時間だった
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