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* Sweet.1 *
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さっきから離れたりくっついたりで、距離感が掴めない。
自分だってこんなこと言いたくない。
見ないふりをして避けていた。でもこれから先、同じことで悩み、壁にぶつかる日が来る。
「余裕ないな、俺」
いつも自信ありげにしている茅野の口から、ぽろっと弱音が溢れる。
茶化せる空気でもなくて、夕里は返す言葉も見つからないまま、寂しそうな背中を追いかけた。
授業前で静かな教室も、茅野が入ると賑やかになる。
主に女子達からの「おはよう」の挨拶に、茅野は纏めて返す。
ついでに後ろからちょこっとついてきた夕里にも、声をかける。
イケメンの隣にいれば、挨拶でも何でも義理だ。
3年で何度か茅野と同じクラスになった女子は、何やら親しい感じで腕や肩に触れている。
進級したばかりで机の並び方は名前の昇順だ。
「朝からおモテになって大変ですねー」と嫌味の1つでも後方から飛ばしたくなる。
実際はそんな勇気もなくて、透明な壁があるみたいに、次元の違うやり取りを眺めるのみだ。
「ちょっとごめん」
ぺらぺらと毎日違う話を持ってくる女子に断りを入れて、急に茅野が夕里のほうを振り返った。
頬杖をついてぼんやりしていた夕里は、少し慌てる。
「な、何だよっ」
「筆箱忘れたから貸ーして」
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