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にじゅういち
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ザワザワと周りが騒がしい。
人の視線が俺に注がれていると気付き、急いで涙を拭った。
「おにいちゃん、だーじょぶ?」
赤い風船を持った3歳ぐらいの男の子に声をかけられて、こんな小さい子に心配されるなんて…と不甲斐なく思って大丈夫だよってぎこちない笑顔で返す。
こんな公共の場で泣くなんてみっともない。
好きな奴がいたからってなんなんだよ。
俺もう会長のことが好きなはずだろ?
なのになんで…
雅也を見るとこんなに心が苦しい。
やっぱり、普通じゃないからかな。
だから忘れられない。
そう、そうだよ。
決して未練があるとかそういうことじゃない。
男に恋したっていう普通じゃない状況に慣れすぎたからそこからまだ抜け出せないだけ。
時間が解決してくれる、きっと。
…きっと。
はぁ、と大きなため息を一つ付いた時頭にコツンと何かが当たった。
「ため息つきすぎ、ほらもう帰るぞ」
後ろに立っていたのは会長で、下アングルなのにかっこいい顔が崩れることはなく、まるで彫刻のようだった。
「あ、早かったですね」
そう言いながら急いで袋を持って立ち上がる。
もう少し目の腫れが引いてから来て欲しかった…なんて。
「店員に聞いたらすぐに教えてくれたよ」
でもそんな俺の心配を他所に、会長は俺の2歩前を歩いていく。
顔を見られなくてよかった安堵と、隣を歩きたい欲望が泥汚く渦巻いていた。
でもそんなこと言い出せるはずもなく、コツコツと靴がコンクリートに当たる音が空に消えていくだけ。
そんなこんなでもう学園に着いてしまった。
生徒会室へ上がる階段で緊張がほぐれたのかやっと口を開くことが出来た。
「会長、これ生徒会室に持っていけばいいですよね?」
「あぁ、仮眠室の机かどっかに置いといてくれ。作業は来週から生徒会メンバーでする」
「分かりました」
こんな事務的な会話ばかりだけど、それでも雅也の時よりももっとずっと好きな人と近くにいられることが出来るのが嬉しかった。
「あぁもう4時か。類、紅茶入れてくれるか」
「分かりました、茶葉は何にしますか?」
「んー…ジャスミ、いやアールグレイで」
「すぐに用意します」
こんなことばかりしてるとおれは執事に向いてるんじゃないかと錯覚する。
会長に
"優真様、お紅茶をご用意致しました"(イケボ)
…なんて、ふふ。
そんなのも楽しい気がする。
「…1人でにやにやしてどうした」
はっとしてその声に振り向くと生徒会室と仮眠室に繋がるドアに寄りかかって腕を組んでいる会長と目が合った。
「いや、俺執事とか向いてる気がするなー…なんて、考えてました」
声に出してみると、とんだしょうもないことを妄想して居たんだと少し恥ずかしくなる。
「…確かに、似合いそうだな」
「へ、?」
まさか肯定の言葉が返ってくるなんて思いもしていなかったから気の抜けた声が出てしまった。
「ふっ…妄想も程々にしとけよ。ほらもうお湯が湧いた」
確かに視線の端の方にもくもくと湯気がたっているのが見える。
でもそれより会長の去っていく後ろ姿から目を離せなかった。
「…はっ!紅茶紅茶!」
ふと我に返ってアールグレイの紅茶をすぐに入れる。
会長の専属執事なんて出来たらきっと楽しいんだろうな。
自分でも知らぬ間に口角が上がっていたことに会長が指摘するまであと数秒…_
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