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一瞬、何が起きたのか分からなかった。
医者をしていて、こんなに動揺したのは久しぶりだったし、こういったことに免疫がないからなのかもしれないが、目がこぼれ落ちそうなほど驚いた。
ココンコンコンコン。
コンコンコン。
頭の奥で、太鼓の音が鳴った。
ゆっくりと膝から崩れ落ちていく甲斐くんの姿が視野を横切りながらも、手を差し出してその衝撃から守ることも出来なかった。
「・・・お相撲さん・・・。」
ツンと突き出したピンクの乳首。
柔らかそうなソレに包まれた肢体は、ゆっくりと仁王立ちした。
黒いまわしは着ぐるみに貼り付けられており、だらんと垂れている。
・・・富永さんって、空気読めない人なのか?
脱衣所から現れた富永さんは、力士の格好をしていた。
「〜・・・甲斐ぃぃい〜ッ!!」
羞恥と怒り。
憤怒という表現が正しいかもしれない、名前を呼ぶ姿にハッとして甲斐くんを見つめた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
甲斐くんの綺麗な土下座に、ビビった。
そして、ここが甲斐くんの家だということを思い出した。
・・・甲斐くんの、私物だ!
何故?!
どうして?
引越しの荷物の中には、およそ変態じみたモノは入ってなかった。
至って普通の男性の私物が加わっただけだったのに。
相撲取りの衣装を着替えとして用意する甲斐くんに、心底驚いた。
「あ、あの!富永さんは悪くなくて!」
「富永さん、ふざけるのはやめなさい!」
山中さんの叱責と甲斐くんの言葉が被ったが、会話についていけなかった。
だって、相撲取りだぞ?
普通、あり得るか?!
甲斐くんの謎の深さに、まだまだ付き合いが浅いことを痛感した。
「ふ、ふざけてるのは課長もだ!その格好は何ですか!」
「あ、あの!課長は悪くなくて!」
なんて事だ。
もしかしたら甲斐くんは、ぽっちゃりタイプが好きなのかもしれない。
腹を押さえた。
中年太りにはならないように気をつけていたが、太ったほうがいいのか?
「寺田さん、可愛すぎる!そんな可愛い姿をみんなに見せちゃダメだ!」
寺田さんと富永さんとの会話に、甲斐くんの目がキラキラしてきている。
まるで『がんばれ!がんばって、富永さんっ!』と言わんばかりのキラキラだ。
「寺田さん!そんなことないから!」
「・・・え?」
え。
山中さん?
「いやいや、そういうことじゃなくて!逆に見せたいというか、自慢したいというか!」
わたわたしだした山中さんを睨みつける力士、富永。
・・・シュールだ。何だコレ。
山中さんはチンピラ姿、寺田さんは警察官、富永さんは相撲取り。
そしてそれをキラキラしながら見つめる甲斐くん・・・。
上手い言い様がなくて、俯いた。
「寺田さんは、本当に可愛い!優しくて気が利いてて、なくてはならない存在なんだ。」
「いやいや、富永さん、そんな。」
なんだろ、コレ。
マスカレードじゃなくて・・・、ああ、そうだ、
「ハロウィンかよ・・・。」
甲斐くんの鼻の穴が膨らんだ。
そして、急に立ち上がって3人に突進した。
「あの!ハロウィンなんです!!富永さんがこの格好してるのは、ハロウィンパーティーしようねって言って準備してただけで、これが普段着じゃないですから!」
・・・どういうことだ?
会話の流れが掴めずに、甲斐くんの顔を見た。
あの相撲取りの衣装は、甲斐くんの私物だよな?
そして、シャワーを浴びた富永さんの着替えとして用意した。
えっと、ハロウィンって月末だっけ。
富永さんが一拍おいて、甲斐くんの話に乗った。
「そ、その通り!寺田さん、俺の普段着じゃないからね!」
「そりゃ普段着じゃないでしょうけど。」
寺田さんのツッコミに、俺は深く頷いた。
もしかすると、甲斐くんの普段着だったのかもしれないからだ。
「課長も寺田さんもハロウィンに参加します。」
堂々と言い切った甲斐くんは、動揺した寺田さんに笑顔で続けた。
「だから、買い出しに行ってきます。」
・・・待て。
ひとりじゃ色んな意味で危険だ。
衝撃を受け過ぎて、力の入らない下半身を叱咤しながら立ち上がった。
「俺も行く。」
そうして事態は動いていく。
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