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目の前の甲斐くんが、横へ吹っ飛ばされていく。
植え込みに突っ込む現実と、その植え込みの枝が突き刺さるイメージが頭を駆け巡った。
甲斐くんの後ろには、走ってきた山中さんが手を伸ばしており、俺は覚悟を決めて、甲斐くんの胸を突き飛ばした。
「甲斐くんッ!!」
「あ、あ、あ・・・ッ!」
山中さん!受け止めてくれ!!
甲斐くんの目が絶望に染まっている。
スローモーションのようにゆっくりと背中から落ちていく姿は、しばらく忘れられそうになかった。
!!
「甲斐さんッ!」
山中さんが両手、そして胸を使って受け止めた。
「た、・・・助かっ・・・た。」
山中さんに支えられながら、甲斐くんはズルズルと地面に座り込んだ。
「甲斐くん、怪我はない?!」
胸を押さえながら頷く甲斐くんに安心しながら、同時に突き飛ばした寺田さんに心底怒りを覚えた。
「て、らださん!甲斐くんを殺すつもりですか!」
「ごめんなさいッ!」
両手を合わせた彼女から爆弾が飛び出した。
「思わず浮気を止めなきゃって思って。」
はあ?
浮気?
イラッときた。
「どういうことだ?」
思わず詰め寄ると、信じられない言葉が出てきた。
「と、富永さんと甲斐さん、お付き合いしてるから。」
はあ?!
「・・・そうだったんですね。」
山中さん、納得するな。
甲斐くんと付き合っているのは、お・れ・だ!
甲斐くんは首がもげそうなくらいの勢いで、首を横に振っている。
「あ!ごめんなさいッ!内緒だったんですよね。」
・・・こんなことを言われたら、信じたいのに信じられなくなりそうだった。
甲斐くんとは医局で会ってはいたものの、彼の会社での様子も、人間関係も知らない。
まだ付き合って一か月。
知らないことの方が多かった。
「甲斐くん・・・。」
「ち、・・・違ッ!」
自分だって、甲斐くんに話していないことは多い。
家族のことや、友人のこと、抱えている問題も、まだ話すことは出来なかった。
甲斐くんだって、そうだと思う。
まだ一緒に住みだしたばかりだ。
これから話していく機会も増えるだろうが、今までの一か月は数える程しか逢えていなかった。
甲斐くんは、自らの頬を叩いて立ち上がった。
「山野さん、誤解です。」
その目は、真っ直ぐに俺を貫いた。
「おれは、山野さんしか見てないし、付き合ってません。」
ああ、・・・俺は何を不安に思っていたんだろう。
「おれは、山野さんが好きです。」
キッパリと言い切った甲斐くんが、俺は眩しくてならなかった。
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