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俺たちは、手を繋いだまま甲斐くんのアパートに向かった。
「あの封筒・・・。」
「うん。」
歩きながら、さっきの会話を思い出した。
『思い出して。メガネから渡された封筒って何だった?』
『・・・あ。封筒、開けてないです。』
甲斐くんの行動の予測がつかない。
自分なら、渡された封筒はその場で開ける。
去り際だったとしても、後で必ず開封するだろう。
人はそれぞれ。
自分と同じ定規で測ってはいけない。
そう思いはするものの、そのズボラな面は改善してもらった方が良さそうな気がする。
『予言するよ。その封筒、絶対破れてカバンの底に沈んでるから。』
そう言った途端、甲斐くんは真っ青になった。
早足でアパートに戻りつつ、俺たちは状況を整理していた。
「山野さんの言われるとおり、その可能性が高い気がします。」
「会社のカバンは、うちだよね?」
「はい、置いてきました。」
ならやはり、本人に聞くしかない。
あのGPSは、封筒から飛び出たに違いない。
そして、単体で甲斐くんから発見された。
あのメガネ!
甲斐くんを不安にさせて!
だが、甲斐くんも悪い。
とても悪い子だった。
最初は、松島に単騎で挑んだ。
その事でお仕置きが必要だと思っていた。
だけど。
「・・・。」
あまりにも、ズボラだ。
だらしがなさすぎる。
・・・カバンの点検が必要だな。
「甲斐くん、給食のパンを机に忘れたりしてなかった?」
「あ、山野さんもありました?忘れちゃって、緑の斑点ができちゃったこと。」
ない。
断じて、ない!
なるほど、小学生の頃からか。
これは危険だ。
修正が必要だと確信した。
これから一緒に生活していくのだ、緑になったパンなんて見たくもない。
それに。
「何故、封筒を確認しなかったんだ?」
「え?ああ・・・、なんだか気持ちがいっぱいいっぱいで、」
俺は甲斐くんの表情をちらりと見た。
「ふあふあしてるみたいで、山野さんのこと以外、考えられなかったんです。」
ぐぉ・・・っ!
何だこの生き物。
可愛すぎる。
「前だったら、仕事終わったらすぐに家に帰ってゲームしてましたけど、今はゲームする時間より山野さんのこと考えてる時間の方が大切なんです。」
甲斐くんは、悪魔なんだろうか。
俺を甘い言葉で縛っていく。
だけど、だけど!
この甘言に惑わされてはいけない!
俺は、絶対に緑のパンなんて見たくないのだ!!
お仕置きだ。
絶対に、お仕置きする。
そもそも甲斐くんが封筒をその場で見ていれば、事件の半分は解決していた。
松島だけマークしていれば良かったのだ。
ああ、松島で思い出した。
この怒り。
飢えた肉食獣の前に、ウサギが飛び出すなんて自殺行為に等しい!
絶対にお仕置きしてやる。
「中島くんに確認しなくちゃ!」
「ぜひそうして。」
甲斐くんは、見えてきた自分のアパートに、居ても立っても居られなくなったようだ。
「山野さん、早く!」
ん?
「ごめん、甲斐くん。先に行って。」
「分かりました!」
手を離して駆け出して行く後ろ姿を見ながら、自販機を確認した。
「・・・清水さん。」
「やあ。何だか凄いことになってそうだね。」
自販機の影から出てきた笑顔の清水さんに、俺は深く頭を下げた。
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