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「……あ〜〜、もう‼︎」
机に突っ伏す。
「ね〜、そんなになる必要ある?」
呆れたような大響の声が頭上で聞こえるが、俺の脳はパンク寸前だった。
昨日あんな場面を目撃してから散々迷った挙句、見たものを大響に打ち明けてしまったのだ。
俺は会議室に駆け込む。
女子部員と仲良く話していた大響は、俺の慌てた様子を見るなり
「宮下遅かったね?…どうした?笑
そんな深刻そうな顔、らしくないじゃん」
と言った。
その表情と声が緊張していた俺の体にスッと入り込み、安堵が押し寄せる。
思わず大響の両腕を掴む。
「…だいき、…ちょっと、来て……」
言ってから気づいたが、声は弱々しく震えていた。
恥ずかしくて俯く。
驚いたようで大響は少しの間黙っていたが、只事ではないと思ったのか、腕を掴んでいた俺の手を握りしめ、廊下まで引っ張る。
人気の無いところまで来て、大響が口を開いた。
「…大丈夫、大丈夫。
話せそうになったらで良いから」
そして俺の頭を優しく撫でるんだから余計恥ずかしかったが、嫌な気はしなかった。
呼吸を整える。
「……さっき、…2Cの教室の隣の空き教室から、声が聞こえるって思って、…覗いたんだけど…」
大響は真剣な顔で頷く。
「……紀野、が、…あいつらに、…」
さっきの光景が鮮明に思い出される。
「あいつらに、…れ、レイプ、されてて…」
口籠っていると、次の瞬間、俺は大響の腕の中にいた。
驚いて離れようとすると、耳元で
「…怖かったよね、もう大丈夫だよ」
と、話し始める。
声色がいつもの大響と少し違う。
混乱していた頭が正気に戻っていく。
…こいつ、恋愛ドラマの見過ぎか?少女漫画みたいなこと俺相手にすんなよ。
今度こそ離れようとするが、離すまいと腕がよりきつく回される。
「1人にしてごめんね。
…宮下はどうしたい?先生に相談する?」
一度離れて話したかったが、不可能だと判断しこのまま話す。
「…言った方が良いって分かってるんだけど、こういう面倒な事避けてきたし、…言い方とか、分かんないし……」
「じゃあ、俺が代わりに言おうか?」
「そ、それは大丈夫!…俺が言う。
…でもちょっと、心の整理できるまで時間欲しいから、…準備できたら付き添ってもらっても良い…?」
尋ねると腕が解かれ、大響の顔が見えるようになる。
「うん、勿論!……もう、大丈夫そう?」
あのときの感情がまた溢れそうだったが、…いっそ全て放ってしまえば楽だっただろうが、躊躇せず蓋をする。
「うん、大丈夫。ありがとな」
おう!と返事をする大響は、俺とは対照的に嬉しそうだ。
やっぱり話せないと思った。
絆され、下で揺れる紀野が、目に妖艶に映り美しいと思ってしまったことを。
というわけで今に至るが、結局俺が1番悩んでいるのは、自分の醜さについてだ。
すっかり俺の悩みは解消されたと思っている大響は、大袈裟だなぁと呟く。
「ほら見てみな?超普通じゃん」
大響の目線の先を見ると、欠伸をし伸びをする紀野がいる。
尚更それが悩ましい…。あれがもし定期的に行われているのなら、それは最も恐ろしいことだ。
…それに昨日、確かに紀野と目が合ったのだ。
あいつは俺に見られたことをどう思っているのだろうか。
「じゃあな宮下!」
片手を挙げて大響を見送る。
もうすでに俺の気持ちは固まっていた。
部活仲間と意気揚々と部室へ向かう大響を確認してから、俺は少し前に教室を出た紀野を追う。
下駄箱に繋がる階段を降りようとしたとき、廊下の先に白髪が見え、駆け戻る。
「紀野!」
少し距離はあったが、紀野は振り向いた。
「あれ、どうしたの?」
どうしたって、お前のせいだろ…!
「昨日のことだよ!無視できるかよ、あんなの…!」
すると意外にも紀野は慌てた表情を浮かべ、しーっ!と人差し指を口に当てる。
「ちょっと、その話こんなとこでしないでよ!」
いやあんな場所であんなことしてるお前に言われたくねぇ!と思う反面、ほっとしている自分もいた。
おおっぴらにするものではないという意識はあるようだ。
「…そうだ、僕これから部活だからあっちでゆっくり話そ…!」
部活…。
何故だか紀野は帰宅部だと決めつけていた。
今初めて紀野が部活に所属していることを知ったが、
大人しく着いて行く。
階段を上り、ほとんど通ったことのない廊下に出た。
紀野が足を止めたのは、美術室の前だった。
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