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慣れているはずの通学路を、身を隠すように俯いて歩く。
あれから家に帰って考えた。
俺は一度に3つの問題を抱えてしまっていたのだ。
まず1つ目は、雄人と恵吾を思いっきり敵に回したということだ。
昨日まであいつらの名前すら知ることもなく、ただ悪い印象を抱いていただけの相手だったが、非常に面倒なことになった。
だがそれを上回り厄介なのが2つ目の問題だ。
俺がかなり紀野のことを好んでいたということ。
…いや、「好む」という言葉が相応しいのかもよく分からない。
ただ今まで出会った人の中に、紀野ほど手放したく無いと思わせるような人はいなかった。
朝は毎日怠いが、今日のような朝は、…いつもここで話し掛けてくるはずの紀野が現れないような朝は、もっと怠い。
下駄箱の前まで来てもまだ願っている。
昨日のことなど無かったことのように、あの笑顔で「おはよう」と言ってくれないかと。
もう1つの問題だが、この2つに比べるとなんてことない。
まずはこれを解決しよう。
教室へ小走りで向かった。
後ろのドアから入り、教室内を見渡す。
珍しく、大響は自席でスマホをいじっていた。
「大響、おはよう」
スマホから目が離され、顔を上げた大響と目が合う。
「昨日大響に丸投げしちゃってごめん。
あの後どうだった?…大丈夫だったか?」
すると大響は、「あー」と低い声で興味なさそうに唸った。
「うん、まぁあの後二人と話して佳のことも解放させて、穏便に済んだよ」
思わずため息が出る。
良かった……。
大響は唯一まともに雄人と恵吾と会話ができる人間だ。
大響は誰に対しても人当たりが良いし、何でもできる。
だから自然とあいつらも大響には逆らえないようなのだ。
改めて、あのとき大響がいなかったらどうなっていたのだろうと思う。
「ありがとう…。
あのとき大響がいてくれて、本当助かった」
「……おう」
少し間があってからそう言って、彼はまたスマホに目を戻した。
いつにもなく冷たいな。
…そりゃ、利用されるみたいな扱い受けたら大響でも嫌だよな。
再び話しかけようとしたとき、チャイムが鳴った。
自席に戻り、今度は紀野の席に目をやる。
心臓をグッと握られたようだった。
そこに彼の姿は無かった。
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