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拓ける道
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グレーゾーンに入り、地下へと伸びる天然の洞窟を、ランタンの光だけを頼りに、約20分ほど歩き続けていた。
「風拉、平気か?」
「大丈夫。心配しすぎだよ」
過保護な俺を、くすくすと笑う風拉の声。
狭く暗い洞窟の中を、風の鳴く音を掻き混ぜるように、声が響いた。
真っ暗な暗闇の中、少し先にオレンジ色の光が見えた。
近づくにつれ、人の姿がぼんやりと浮かび上がる。
こちらの光に気づいた男は、ランタンを大きく振り、走り寄ってきた。
「よぉ、歌護。今回のお土産なに?」
歌護の顔へとランタンを翳しながら男は、わくわくする感情を隠しきれない瞳をこちらへと向けた。
「新しい住人」
言葉を紡いだ歌護が、風拉の肩へと腕を回し、自分の隣へと誘う。
「ぉお……」
感嘆の声を零した男は、値踏みでもするように、風拉の頭から足へとランタンを滑らせる。
「Ω…?」
するりと風拉の肩口へと顔を近づけた男は、すんすんと匂いを嗅ぎながら、歌護へと視線を向ける。
歌護の知り合いらしい男に、危険な感じはしない。
でも、不躾な男の振る舞いに、俺の胸はじりっとした嫉妬の炎を燻らせる。
「Ωだけど?」
喧嘩腰に声を放った俺は、男の肩を押し退け、2人の間に身体を滑り込ませた。
男から見れば、暗闇から急に姿を現したであろう俺に、きょとんとした瞳が向けられた。
「妬くな、妬くな。取って食おうとか思ってる訳じゃないんだから」
けらけらと笑った歌護が、俺の背をばしばしと叩き、腕を引かれ離される。
「行こうぜ」
俺の腕を掴んだままに、歌護は先を促す。
「はいよ」
少し先へと歩き、男は土だらけの横壁を爪先でトントンっと叩き始めた。
数ヶ所を爪先で弾いた男の前の壁が、ざざっと小さな音を立て、崩れた。
今まで無かった脇道が、姿を現す。
俺も風拉も、急に現れたその道をきょとんと見詰めてしまう。
先を促す歌護に、俺は風拉を気遣いながら、中へと足を進めた。
「こいつら、番なんだ」
ちらりと俺と風拉へと視線を投げた歌護に、男が納得の声を放つ。
「ぁあ、それでか」
言葉を繋ぎながら、男は崩れた壁を手際よく直していく。
「なんかうっすらとしか嗅ぎ取れないから、オレの鼻、鈍ったのかと思った。……ってことは?」
元の通り壁となった抜け道に、男の視線が再び風拉へと向く。
「そう。腹ん中に、もう1人。珀蘭…こいつは、番の風拉ちゃんが心配で心配で、お留守番できなくてついてきた感じ」
ばんぱんっと手の汚れを払った男は、チャラける歌護に、くすくすとした笑いを零す。
「過保護で悪かったな」
チッと不満げな声を上げる俺に、男の腕が絡みつき、肩を組まれた。
「わかるよ、すんげぇわかる。あんな場所、人が住めるなんて思えねぇもんな」
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