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オレの企み
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はっとなり、無意識に噛みついた頸を、そっと放つ。
赤く変色するその場所に、指先を滑らせた。
ふわりと顔を上げた緋泪は、今にも泣き出しそうな笑顔を零す。
好き。
愛してる。
大好き。
恋しい。
愛おしい。
言葉は浮かぶ。
でも、それを音にして放っても、オレの感情を伝えきれる気がしない。
その存在を確かなものにするように、オレは緋泪の頬に片手で触れた。
じっと見詰めてくる緋泪の瞳。
吸い込まれ、目が離せない……。
「お前でもそんな顔、するんだな」
安心したというように、尾憑の表情が柔らかくなる。
「緋泪は、裏から出てもらう。このルートを辿れば、監視カメラもないし、ここに居る監視員は俺の息がかかってるから」
テーブルの上に差し出された手書きの地図。
逃走ルートを辿る尾憑の指先を目で追った。
オレの視線を辿るように、緋泪の瞳も地図へと向けられる。
「歌護は、来たときと同じように車でここまで行け。ここで緋泪をピックアップすればいい」
床に膝をつき、オレの腰に抱きついたままの緋泪の脇に手を入れ横に座らせ、尾憑が指差すピックアップ場所に視線を向ける。
そこは、ゼロ地区とC6地区との境目だった。
「ここからはお前の方が詳しいだろ」
示された場所から、数ヶ所の区域の境界を越え、オレの居住区、Y23地区に一旦避難する。
自分の家を思い浮かべ、風拉と珀蘭の姿が脳裏を過ぎた。
緋泪を抱かなかった珀蘭。
風拉を案じ、その[運命の番]を助けるために、珀蘭への協力を惜しまなかった緋泪。
妙案が頭に浮かんだ。
「良いコト、思いついた」
閃いたと口角を上げるオレに、尾憑の瞳が嫌悪を浮かべ細くなる。
「消してほしいα…、珀蘭は、緋泪と接点がある」
紡いだ言葉に、緋泪がぴくりと身体を揺らし、慌てオレを見やった。
声にならないほど驚いたというように、消すって何? とでも言いたげな顔を見せる緋泪に、オレはその頭を柔らかに撫でる。
「殺すとかじゃないよ。珀蘭も逃がしてやろうと思って。お前と同じように」
ぱちぱちと瞳を瞬いた緋泪は、少しだけ首を傾げながらも、なんとかオレの言葉を消化する。
「あー、うん。あとでちゃんと説明する。でも、悪いようにはしないから。珀蘭も風拉も幸せになって欲しいだろ?」
オレの問いかけに、緋泪は迷いなく頷く。
「オレもあいつらを幸せにしてやりたいの。で、だ」
言葉を切り尾憑へと向ける瞳には、何を言い出すのかと戦々恐々となる表情が映る。
「珀蘭をまた繁殖所へ行かせる。そこで、一悶着起こさせる。緋泪が居ないってな」
オレの意図を読みきれない尾憑の眉間には、深く皺が刻まれた。
「珀蘭と緋泪が運命だったと、真しやかに噂を流すんだよ。緋泪の自害に、心を病んでって方向なら……、後追いで処理できるんじゃねぇ?」
全貌が見えたオレの企みに、尾憑は空を見詰めて、絵図を描く。
「……ま、悪くはないか。その方向でいくか」
話がついたオレたちは、珀蘭と風拉のIDと必要な情報を伝え、尾憑の家を後にした。
予定通り、ゼロ地区とC6地区との境界で緋泪をピックアップする。
緋泪を拾う直前に、珀蘭に連絡を入れた。
ただ、オレの家で待て、と。
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