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両片想い45
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未だにじんじん痛む下半身を抱えながら、白い目で見下ろす白鷺課長の視線を、懸命に無表情で受け続けた。ここで少しでも笑ったりすると、自らを絶体絶命に追い込むことになるのが、容易に想像できる。
「石川さんがトイレに行って、部署には不在。俺たちが出て行ってすぐなのに時間がかかりすぎだと考えた鉄平は、一応トイレをチェックしてから、ここに来てくれたんだろうなぁ」
「その通りだ。それで、石川を貶める方法ってなんだよ?」
「俺がここに入ったすぐに、石川さんはあっちの扉からコッソリ入ってきた。理由は知らない。そして俺たちがイチャイチャしてるのを眺めて、鉄平が出て行ったタイミングで俺から声をかけたんだ。すんなり姿を現したから、これはなにかあると咄嗟に思って、スマホに入ってるボイスレコーダーを起動させたというわけ」
「なるほど。それを警察に持って行けば、石川の犯罪を立証できてしまうもんな」
「待ってくれ! 犯罪っていったい」
話の腰を折る感じでふたりの会話に割り込み、慌てて立ち上がった。
「今は男同士でも、わいせつ罪が適用される。覚悟するんだな」
白鷺課長の心の芯まで凍る冷たい言い方に、躰が勝手に震えだす。
「で、でもまだ…手は出してな、い。本当、に」
たどたどしく言いながら、社長の息子を見た。
「石川さんあのとき、自分がなにを言ったのか覚えてます? 俺ってばあれだけで、メンタルがズタボロに傷ついちゃいました。病院に行って診断書が出れば、未遂でも傷害罪が適用されたりするかもしれませんね」
「とはいえ、あの状況でまったく抵抗しない壮馬も、どうかと思うけどな」
はーっと深いため息をつきながら胸の前で腕を組む白鷺課長に、社長の息子は顔の横で右手人差し指を横に振った。
「ちっちっち、鉄平はネコだからわからないか。抵抗されたらされた分だけ、無理強いしたくなるって。ねぇ石川さん」
縋るように見つめる俺の視線を、社長の息子は嫌な感じに瞳を細めながら受ける。してやったりなその雰囲気に飲まれて、背筋がぞくっとした。
「桜井くん、もしかしてそのことを計算していて、あのときわざと怯えていたのか!?」
(――顔色を青ざめさせるなんて演技を、どうやってしたというんだ……)
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