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呪いの証
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温かく柔らかそうな金色に誘われて、男は躊躇いがちに、指を伸ばした。
少年の髪は、思ったよりも柔らかく、サラサラと指の合間をすり抜ける。
リンデルは、ほんの少しくすぐったそうに目を細めた。
(……もっと、触れたい……)
カースは黙ったまま、二度、三度と繰り返し少年の髪を撫でる。
リンデルは大人しく撫でられながら、男の顔を見上げていた。
右眼の森の色は、暗い夜の森から明け方の朝焼けの中へと、色を和らげていた。
左の空色も、今はどこまでも透き通るような色で、思わずうっとりと見惚れてしまう。
ふ。とその目が少年を見た。
目が合って、男が微かに戸惑いを浮かべる。
「お前、俺の目がそんなに珍しいか?」
「えっ、あ。そういうわけじゃなくて、その……」
リンデルが、恥ずかしそうに頬を染めて目を逸らす。
「綺麗だな、って、思って……」
少年の伏せた睫毛が、ふるふると小さく揺れる。
少年に手を掴まれたままだった左手が、キュッと握られた。
少年は照れているようだった。
俺のこの目が綺麗だなんて、そんな事あるわけがない。と男は思う。
気味が悪いとか、そんな言葉しか投げられた事はなかったし、自身もそう思っていた。
生まれた俺を見て、城の占術師は、呪われた子が生まれてしまった事を大いに嘆いたらしい。
父である国王にも、俺の左右で違うこの眼は、呪いの証だと、すぐに殺すべきだと告げられた。
それなのに、両親は俺を殺さなかった。
……だから、国はあんな事になったんだろう。
こんな命など、躊躇わず潰してくれればよかったのに。
カースの瞳が酷く暗い色に変わったのを見て、リンデルは慌ててその手を引いた。
「!?」
男は不意に手を引かれ、ストンとベッド脇に膝を着いた。
「お前、急に何ーー」
「ご、ごめんなさいっ。綺麗って言われるの、嫌だった?」
見れば、金色の瞳にじわりと涙が滲んでいる。
「カース、大人の男の人だもんね、カッコイイの方が良いよね?」
男は、わたわたと見当違いに慌てる少年を、宥めるように撫でた。
「そんなんじゃねぇよ。いいから、落ち着け。傷に響くぞ」
少年は、やはり痛んだ体により与えられた快感に、声を殺して息を荒げていた。
「っ。ぅ……」
「ほら……急に動くからだ」
快感を堪えるように、体を縮めて耐える少年がやけに小さく見えて、男はすぐ近くに来てしまった少年の頭をそっと抱き寄せた。
「ふ、あ……」
少年が、小さくぷるると震える。
胸元に抱いた少年の頭を、なるべく刺激しないように、ゆっくり優しく撫でていると、ギュッと目を閉じ眉を寄せていた少年が、次第にとろんとした顔に変わってくる。
「もう寝ろ。明日が来てしまうぞ」
カースの優しい声に、少年が「うん……」と答えて間もなく、その呼吸が寝息に変わる。
しかし、寝ついた少年の手は、まだ男の手を握っていた。
(……どうしたもんかな)
カースは困ったように、けれど口元をほんの少し綻ばせ、苦笑した。
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