アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
日下 ~side~
-
初めてあの人を見た時は…
夕陽に照らされた寂しそうな笑顔だった。
でも…どこか優しくて…なんだか胸が締め付けられる…
気が付けばカメラを起動して写真を撮っていた。
それに気が付いた叶先生が、こちらを見る。
色素の薄い茶色い瞳で…真っ直ぐ…
[おい。]
〔…俺?〕
[お前しかいねぇだろ?]
〔俺の名前"おい"でも"お前"でもないでーす。〕
すると叶先生は舌打ちをして、頭を乱雑に掻いた。
先程の表情は消えていて、いつもの仏頂面になっている…
[日下…だっけ?]
〔そーでーす!〕
[お前今写真撮ったろ、消せ。]
〔え〜?〕
[消せって…]
〔嫌だね。〕
[………。]
〔こんなに綺麗に撮れたんだよ〜?〕
携帯の画面を掲げると、少し顔を赤らめた。
うわ…何その顔……
また胸が締め付けられる。
〔ね、叶先生…〕
[〜〜っ…何だ。]
〔俺、叶先生と仲良くなりたいな。〕
[は?]
怒った顔…
[何が望みだよ…]
〔んー……〕
呆れた様な顔…
〔あ、じゃあ手始めにかなちゃんって呼ばせて!〕
[はあ?!]
驚いた顔…
〔かーなちゃんっ!〕
[うるせぇな…]
擽ったそうな照れた顔…
もっと…もっと見たい。
あんな顔じゃなくて…
[あいつ…幸せそうに笑うんだ……]
〔………。〕
優しく笑いながら涙を流す姿…
嗚呼…違う…違うよ…
〔かなちゃん見て見て!これ!〕
[……ぶはっ…あっははは!なんだよお前…あははは!!]
これだ…
この顔だ…
心から楽しそうに笑っている。
嗚呼…笑うと眉が下がるんだ…可愛い…
可愛い…?
そうか……俺…
〔かなちゃん…俺、かなちゃんが好き。〕
[………。]
困った様に眉を寄せて、必ず何か言い訳をして立ち去る。
かなちゃんが俺を見ない理由、それは…
『お前ら廊下走るなよー。』
[………。]
かなちゃんの目には、あの人しか映っていないから…
愛おしそうに…それでも寂しそうに…
でもあの人には、大切な人が居る。
かなちゃんが想いを伝える前に、結ばれた相手。
「日下君、次移動だって。」
〔うん、行こっか。〕
儚く消えそうに微笑む…友人。
かなちゃんが一番愛されたい人から、愛を受けてる人。
恨んでいる訳ではない、けれど…少しだけ苛つく。
「何か俺……空回ってたみたい…ごめん。」
〔そうなの?〕
「うん……叶先生の好きな人が分かって、ちょっと慌てた…でも…俺が何したって叶先生は報われない……俺が居るから尚更…」
〔…そんなに卑屈にならなくても良いんだよ?〕
「でも…それが事実で…」
〔…それなら…〕
好きな人に悲し思いをさせる、そんな事は許されない。
どんなに大切な友人でも…そんな事はさせない。
それでもウジウジと悩んで、無自覚にかなちゃんを傷付けて。
嗚呼…苛つくなぁ…
〔それならかなちゃんの為に真羅先生の前から消えてくれんの?〕
「え……」
自分の口から突き放すような声音が出てしまった。
狼狽えながら、固まっている。
俺が一番驚いている…まさかここまで気持ちが出てしまうとは思っていなかった…
けれど、もう引き返せない程…俺は酷く苛ついていた。
〔俺だってね、好きな人を悲しませてる奴を許せる程心が広い訳じゃないんだ。〕
「………。」
〔勇間が100%悪いって言ってる訳じゃないよ?真羅先生にだって本当は腹を立ててる。〕
「ご、ごめ」
〔勇間が謝ってこの状況が変わるなら最初から変わってるよね。〕
こんな事したって、かなちゃんが報われる訳無いのに…
けど、もし叶うなら俺じゃなくても良い。
幸せな顔が見られるなら…笑った顔が見られるなら…それで…
そ、れで……良い…………訳ない。
俺が幸せにしたい。
俺が笑わせたい。
かなちゃんの喜怒哀楽全て、俺が見たい。
俺だけが知りたい。
涙なんて流してる暇が無いくらい、いっぱい笑わせてあげたい。
〔あ!かなちゃん!これは違くて!!〕
[五月蝿い…言い訳なんか聞くか。大体、お前みたいな若いやつが俺なんかよりも同い年に行くのだって理解できるし、散々突き放した挙句にこんな縋り付くみたいにもどっ………]
〔かな…ちゃん…?〕
赤くなった顔が、可愛くて…思わず抱き締めたくなった。
逃げ出すかなちゃんを追いかける、嗚呼…可愛い…可愛いっ…
俺だけが知りたい…いや、俺だけが引き出せる顔を見せてやりたい。
独占欲だ、これは…
〔かなちゃん、好き…大好きだよ。〕
[………おう。]
〔かなちゃん、笑って。〕
[はぁ?何言ってんだお前、馬鹿だな…ククッ…]
〔また無理してるでしょ、こっちおいでよ。〕
[ん……]
〔俺生まれ変わっても絶対かなちゃんに恋する自信ある!〕
[は?死ぬ予定あんのかよ…俺を置いて……]
[龍…って、二人だけなら…呼ぶ…]
[お前の事はちゃんと真面目に考えてる。]
[ふっ……ばぁか…]
[龍……]
〔かなちゃん、俺は何があっても絶対に離れないから。〕
〔悲しい顔なんて二度とさせない。〕
〔幸せにする。〕
〔世界で一番愛してる…〕
泣きながら嬉しそうに笑うその人が…次第に塗り潰されて行く
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 9