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日下 ~side~
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〔か、な……〕
目が覚めれば、そこは見慣れた天井で…
ゆっくりと起き上がると、頬に涙が伝った…
〔なにこれ…〕
止まらない…
苦しい…
夢の事は覚えてないのに、なぜかずっと…
ー[ただの生徒と教師だ…それ以下でもそれ以上でもねぇよ。]ー
優しく…悲しそうに微笑んだ叶先生の顔が浮かぶ…
その顔が凄く嫌で…ジクジクと胸が痛む。
叶先生に会わなきゃいけない気がする…
嗚呼…駄目だ、今の俺には何も分からない。
〔っ……〕
周りの反応…そして何より、叶先生の反応…
薄々勘付いてはいる。
でも、ハッキリとした関係では無いのだろう…
ならこの気持ちは何だ?
〔かなちゃん……〕
ポツリと呟いた言葉は、しっくり来て…
馴染みがある…
俺は…叶先生の何だったんだろう…
〔はぁ………〕
水を飲もうと、冷蔵庫を開ける。
そこには2つのプリンが置かれていた…
一つには達筆な字で書かれた俺の名前、もう一つには俺の字で……
〔かなちゃん…の分……〕
かなちゃん…
再び出てきた言葉を呟く…
すると、後ろから何かが落ちる音がきこえた。
振り向くと、勇間が驚いた様な顔で見ている…
「く、さかく……今…」
〔え?〕
「叶先生の事、思い出した?」
〔……ううん、これ…〕
冷蔵庫から、プリンを取り出し見せる。
納得したのか落としてしまった携帯を拾い、部屋に入って来る。
「少しは眠れた?」
〔まぁ……〕
勇間がここに居るのは、真羅先生が提案したからで…
俺が心配だから…とか何とか言って、勇間を貸し出した。
二人は恋人なのに、どうして簡単に自分の恋人を他人に差し出しできるのだろう。
信頼してくれてるのはありがたいけど…
〔何か…俺格好悪いな…〕
「…そうかな?」
優しく微笑む勇間…
出会った頃はあんなにも刺々してたのに。
こんなに柔らかくなった…色々あったなぁ…
色々……
思い出そうとした途端、頭が痛んだ。
〔…っ…!〕
「日下君!?大丈夫?頭痛むの?」
〔…っ…だい、じょう…ぶ…〕
痛い…
頭が割れそうだ。
目が回る…気持ち悪い…
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い…っ!
こんなに痛いなら思い出さなくても良い…ずっと忘れたままで…
ー[龍、お前アホだな!あっははは!!]ー
〔…っ……?〕
何だ…今の……
眩しい笑顔……眉が下がって…
嗚呼、顔を思い出せそうなのに…また痛くなる。
〔ごめん…もう一回寝る…〕
「う、うん…無理しないでね…」
〔おやすみ……〕
這うように、部屋に戻ってベッドに雪崩込んだ。
深呼吸を繰り返せば、段々と和らいでいった…
それと共に…さっきの誰かの顔も消えていく…
悲しいような…
良かったような…
何とも言えない気持ちになる。
〔クソッ……何だよ、これ…っ!〕
嗚呼…酷く苛つく…
〈たっつーん!〉
〔おー、美久…っとと、急に抱き着くなって。〕
それからは痛みが酷くならないように、女の子と遊ぶ様になった。
遊ぶと言っても、ヤる事は無い。
そういう雰囲気になると、必ず罪悪感が押し寄せてくる…
誰に対して後ろめたさを感じているのか…
どうしてそそられないのか…
分からない…
〈って、聞いてるー?〉
〔ん?あぁ、ごめんごめん…〕
楽しくない。
どれだけ遊んでても…何かが満たされない。
悲しくて…苦しくて…
ずっと、水の中に居るみたいだ。
「…君………日下君?」
〔勇間…〕
「大丈夫?ぼーっとしてる…」
〔うん…大丈夫。〕
「………。」
〔次移動だよね?行こっか。〕
「うん…」
寂しそうな視線を感じる…
その視線を追えば、必ず叶先生が居た。
俺はどうしたらいい?
俺にどうして欲しい?
分からない事だらけで余計に苦しい…
開放されたい…
楽になりたい…
こんなにも苦しいこの状態から…
思い出そうとする度。全身に響くこの痛みから…
叶先生の…視線から…
〔ね、勇間…〕
「ん?」
振り向いた勇間に、言い放つ。
次第に顔が険しくなっていくのを、ただ呆然と見つめた。
俺に駆け寄り、手を伸ばしてくる…
何かを叫んで…嗚呼、でも…
聞こえない。
周りに人が集まって来て、その中に真羅先生と叶先生が居た。
目が合った叶先生は、驚いた顔をしながら瞳に涙を浮かべさせている…
胸が締め付けられる…駄目だ…そんな顔…
〔かなちゃん…〕
呟いた瞬間、少しだけ嬉しそうに目を見開いた。
胸が軽くなった気がした…
手を伸ばして駆け寄る叶先生を最後に、俺は階段から落ちた。
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