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さっきまであんなに身体は軽かったのに、正体不明の重しが肩にのしかかったみたいだ。希は身支度を整えると、ウェイティングルームで出されるお茶を断った。
マンションの廊下でエレベーターが上がってくるのを待っていたとき、背後から慌てるような足音が聞こえた。振り向こうとしたその手を、いきなりつかまれる。
希はびっくりした。奎吾がこれまで見たこともないような必死な顔をして、自分の腕をつかんでいるからだ。希はぱちぱちと瞬きした。いったい何が起こっているのだろう。
「どうかした……?」
「え」
「……なんで俺の手をつかんでんの?」
「……わかんねえ」
希が問えば、奎吾はますますその顔に困惑を滲ませた。希は、ふっと笑った。
「なんだよそれ……」
希の笑顔に、奎吾はほっとしたようにつかんでいた手を離した。自分でも何をしているんだろうと戸惑うようすの奎吾に、希はくすぐったさを覚えた。
変なやつ。でも、嫌じゃない。それどころかうれしいと思うのは、自分が相手に嫌われていると思っていたからだろうか。
気がつけば、何を考えているかわからない瞳で、奎吾がじっと希を見ていた。
希はドキッとした。
何だよ、俺。何どきどきしてるんだよ。
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